かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

成瀬巳喜男監督『浦島太郎の後裔』(1946年)


ringoさんの感想がこちらにあります。これに、ぼくはあまり追加することがありません。


変な映画ですね(笑)。これが成瀬巳喜男作品とは、知らなければわからないとおもいます。どこにも「らしさ」はありません。


想像でいえば、とんでもない会社企画を押しつけられて、成瀬巳喜男は困ったのではないか、とおもいます。まるで、作風にあいません。成瀬巳喜男の、ヤケのヤンパチになった困惑が伝わってまいります。


戦争が終結して1年。戦後、猫も杓子も徹底抗戦から民主主義へ。映画会社の意向も例外でなく、戦意高揚映画が、民主主義映画に鞍替えしました。


会社企画を断ったことがない、という職人成瀬巳喜男です。およそガラでない、民主主義映画を撮るハメになりました。その結果は、惨憺たるものであります。しかし、こういうテッテーした失敗ぶりが、むしろ何か気骨の裏返しのような気がしてしまうのは、贔屓の引き倒しでしょうか(笑)。


ターザンのような雄叫びをあげる浦島氏(藤田進)が、高峰秀子扮する女性記者の演出もあって、国民的ヒーローにのしあがる。それが、政治政党に利用されて、彼は本来の人間性を見失ってしまう……。


しかし、その浦島氏がやがて、自分が政党に利用されている傀儡のヒーローだった、ことを知り、真の人間性をとりもどす。


いわく「ヒーローなどはいらない!」。


というようなストーリーは一応あるのですが、中身は・・・(笑) 




【了】