柳家小さん:まずいちばん肝心なのは、人物ですよ。人物が出て、季節感が出て、情景描写ができる、そしてはじめて芸ですよ。
(『落語藝談』より)
『落語藝談(らくごげいだん)』(小学館ライブラリー)は、桂文楽、林家正蔵、三遊亭円生、柳家小さんから、<噺家になるまでの生い立ち>、<芸と修行>、<落語界の現状>(単行本は1976年発行)、<若手へのアドバイス>などを、たっぷり時間をかけて聞いている。
聴き手は、ぼくがむかし井原西鶴の現代訳でお世話になった暉峻康隆(てるおか・やすたか。個人的な面識はありません、笑)氏。
4人の名人が語る、中身の濃い芸談がおもしろい。
はじめにあげた柳家小さん(写真)の言葉は、どうでしょうか。
つまり落語は、<最初に笑いありき>ではないんです。登場人物が生きているかどうか、これが落語の生命線として、一番大事だ、と名人はいっています。そして<季節感>と<情景描写>。
これは映画でも小説でもいえることだとおもいました。