かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

新藤兼人作品『悲しみは女だけに』(1958年)



同じ新藤兼人監督の『落葉樹』(1986年)では、没落した旧家の借金を結納金で払うために、長女はアメリカへ嫁いでいきます。少年の目で、母や父、兄弟を抒情的に回顧した、いい作品でした。


『悲しみは女だけに』は、味わいはまったく違うのですが、それから30年後、その長女が、アメリカから、故郷の尾道に一時帰郷する、というところからはじまります。


『落葉樹』では、一家を襲った悲しみに向かって、母を中心に、家族のこころは1つにまとまっておりましたが、『悲しみは女だけに』では、長女(田中絹代)が30年ぶりにアメリカから帰郷してみると、成人した兄弟の心はバラバラ。自分のエゴをぶっつけあって、家族が衝突します。


全編ほとんど家の中だけ。舞台劇のような作品だな、と思って見ていましたが、いまgooの映画解説を読んだら、「新藤兼人が民芸の舞台にのせた『女の声』の映画化」とありましたので納得。


映画は、無能な父(小沢栄太郎)が、大声で「みんな、ここから出て行け!」と叫ぶところで、突然衝撃的に終わります。見ごたえのある作品でした。