かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

三池崇史監督『十三人の刺客』(上映中)


弟から「あまりおもしろくないよ」といわれていたけど、見にいってみた。冒頭いきなり切腹シーンが長々とあって、いやになる。残酷なシーンはあまりくどく描写してほしくない。


筆頭老中土井を演じる平幹二朗が、主人公の島田新左衛門(役所広司)に、暴君の刺客を依頼する。


一言一言過剰に力む平幹二朗のセリフは、旧来の時代劇そのもので、少し滑稽であった。


それに対応する役所広司のセリフは、どこか軽快にぬけていて、新旧時代劇の感覚の違いをかんじた。もちろん、ぼくには役所広司のほうが、しっくりくる。


映画は、黒澤明の『七人の侍』を彷彿させるところもあるし、それを監督自身意識していないとはおもえないけれど、深みとリアリティには格段の差がある。


そんなことを忘れて、これは単純な痛快活劇で、最初からリアリティなどは問題としてないのだ、と割り切ってみれば、なかなかおもしろいし、あきさせない映画、ではある。


しかし、黒澤明は痛快娯楽時代劇をつくる場合でも、リアリティには執拗な目配りをするのだが・・・


この映画は、圧倒的多勢に無勢、という状況のなか、13人の刺客が狙うは、ただひとり、暴君松平斉韶(まつだいら・なりつぐ)である。


待ち伏せして狙うなら、斉韶ひとりに狙いを定めて討ち取る、もっと効果的な策がありそうだが、打ち寄せる敵を、ひたすら切って切って切りまくる、という無策さは、痛快時代劇だと割り切っていても、ちょっとバカバカしくなった。


役所広司はやっぱりいい。役所広司が主演でなかったら、もっとアラが目についたかもしれない。