かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

テリー・ジョージ監督『帰らない日々』(上映中)



テリー・ジョージとは、あの『ホテル・ルワンダ』の監督です。『ホテル・ルワンダ』の監督なら、つまらない作品はつくらないだろう、と思いながら見にいきましたが、期待ははずれませんでした。いい映画ですよ。


ひき逃げで息子を失った被害者家族の深い悲しみと、心ならずも加害者になってしまった男の苦しみの奥底を、じっくり見つめて描いています。


ありそうなテーマも、力量のある監督がつくると、これだけ見ごたえのあるものになるんですね。


息子を失った父の悲しみをホアキン・フェニクスが本当にうまく演じています。この父は、同じく、悲しみに暮れる妻(ジェニファー・コネリー)や娘を案じて、はじめは一番正気を保っているようでしたが、次第に心のコントロールを失っていきます。この心の変化の演技がみごとですね。監督は正攻法です。


加害者(マーク・ラファロ )の良心の苦しみは、ほとんど恐怖です。早く自首しなければ、とおもいながら、普段は離婚した妻と暮している、自分の息子と一緒に過ごせる数日間が過ぎるまでは、とためらい、また、息子に父がひき逃げの犯人だ、と知られることも苦痛で、決断が遅れてしまいます。


そんな加害者の躊躇(ちゅうちょ)が続くうちに、被害者の父に、彼が犯人であることを知られてしまうのですが、対面した被害者と加害者の男たち、その双方の苦しみが、的確に描かれていて、みごとなクライマックスを迎えます。


映画の終り方も、やりすぎることなく、これしかないなあ、となっとくしてしまいました。