かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

山田洋次監督『母べえ』(2007年)


母べえ 通常版 [DVD]


吉永小百合は、<吉永小百合>しか演じられない。さらに『母べえ』といういかにものヒューマン・タイトル。で、見るのをためらっていました。


DVDになって、期待もしないで見ましたが、う〜む、やっぱり山田洋次はていねいにある時代を描いています。セットも含めて、よかったです。


いつもながら吉永小百合は、いいところばっかりもっていってしまいますが(笑)、序盤から、刑務所へ連行されて、ずっと薄汚いままで死んでいく夫役の坂東三津五郎は、ちょっと気の毒な役柄でした。あんな役、よく引き受けたものです。


映画の印象は、むかしずっとお正月になると、向田邦子のドラマをやっていましたが、あんな感じです。外には戦争の影が重くのしかかっていますが、映画の舞台は、野上家の家の中か、もしくはその周辺だけに限定されています。


子役の二人は、うまかったですね。最近子役の活躍が目を惹きます。



浅野忠信は、どういう役柄でもこなしますが、この作品でも、いい味を出しています。じつに達者なものですが、オーバーな演技はしませんね。


それから壇れいがきれいでした。戦争が迫ってくる時代が背景ですから、着るものは、シンプルな白いブラウス姿ですが、それが清潔で、聡明に感じられ、ぼくは『武士の一分』の壇れいよりも、こちらに惹かれました。


狂った時代になると、まともな考えは通用しなくなる、空元気とタテマエだけが世間にあふれ、本音をいうこともできない。獄中で憤死しなければならない夫は、さぞや無念であったろう、とおもいます。


本当に戦争はいやです。