かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

木下恵介監督『日本の悲劇』(1953年)


戦争未亡人の春子(望月優子)は、女手ひとつ、戦後のあらゆる苦労を重ねながら、二人の子供のために働いてきた。いかに身を落としても、それは生活のためであり、子供のためであった。


しかし、成長するにつれて、貧しさの辛酸を舐めた子供たちは、母を軽蔑していく。母の貧しさを、その性癖を、恥ずかしいとおもうようになる。


いつまでも子供を生きがいとする母と、その貧しい母から逃げようとする子供たちの、永遠のすれ違いの<悲劇>が描かれている。



自分ごとですが、母が亡くなるまで、価値観や考えを一度も共有できなかったわたしには、痛切なテーマです。


部分的には、「涙・涙・涙」のシーンもあって、もう少し乾いた表現のほうがいいな、とおもったりしましたが、作品全体を貫くテーマは、非常に厳しく、痛切な映画でした。