かぶとむし日記

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「ビートルズとは、ディランとブライアン・ウィルソンが一緒に在籍し、協力し合っていたような、常識ではちょっと考えられないグループだったのだ」

ビートルズ カバーソングの聴き方―What are The Beatles made of?
上記の文章は、恩蔵茂著『ビートルズ カバーソングの聴き方』からの抜粋です。



ビートルズの『ラバー・ソウル』を聴いて、ビーチボーイズブライアン・ウィルソンが触発され、彼の代表作といわれる『ペット・サウンド』をつくり、また、そのアルバムを聴いておどろき、発奮したポール・マッカートニーが、あの『サージェント・ペパーズ』を製作したことは、すでに有名なエピソードです。


しかし、ビートルズビーチボーイズの他のメンバーの反応は違っていました。


ビートルズのメンバーは、ポールの「ペパーズ」のアイディアに全員が協力し、ついにロック革命を起こしたのですが、ブライアンの『ペット・サウンド』は、他のメンバーからもレコード会社からも、支持を得ることができませんでした。

ブライアン・ウィルソンの悲劇は、彼がめざす音楽にメンバーもレコード会社も理解を示さず、それどころか、あからさまに彼の挑戦に反対し、従来の<サーフィン路線>に固執したことにある。ブライアンをポールになぞられるなら、彼のグループにはジョンも、ジョージも、リンゴもいなかった。孤軍奮闘の彼には、ジョージ・マーチンのような存在すら傍にいなかったのだ。


「第6章 同時代サウンドとビートルズの自己革新」(P192)


ジョン・レノンボブ・ディランの歌詞に刺戟されたことも、よく知られていますが、それについても、恩蔵茂氏は、詳細に触れています。


そして、、、

ジョンは、ディランからミュージシャンとしての<哲学>と歌詞の面で計り知れない影響を受け、ポールはブライアン・ウィルソンからサウンド面で強い刺激を与えられた。逆に考えれば、ビートルズとは、ディランとブライアン・ウィルソンが一緒に在籍し、協力し合っていたような、常識ではちょっと考えられないグループだったのだ。


「同じく第6章(P193)」


事実そのものは、周知のことかもしれませんが、こう書かれてみると、とてもわかりやすくビートルズというバンドの幸運と凄さが見えてきます。



タイトルが「カバーソングの聴き方」となっているので、そういう内容なのかとおもっていると、前半はそうですが、後半は、ビートルズのアルバムの魅力に深く分け入った傑作本です。「What are The Beatles made of ?」というサブタイトルのほうが、内容を的確にあらわしているかもしれません。


なかでも、圧巻なのは、『リボルバー』と『サージェント・ペパーズ』のアルバム分析。長くなるので、詳述しませんが、読んだら、きっと啓発されるとおもいます。わたしのなかでは、ぼんやりしていたものが焦点があうようにわかってきました。


恩蔵氏の本が素晴らしいのは、豊富な知識と鋭い感覚に加えて、ビートルズへの深い愛情があること、それがこの本を根底で輝かせています。




恩蔵茂さんは、この曲を「ベスト1」にあげています。ぼくも1964年の6月頃、この曲に出遭って、ビートルズに夢中になりました。