里見弴のはじめての評伝が出たと知り、早速図書館へリクエストした。おもしろければ、買ってもいいのだが、安くはないので、まずは借りて読んでみたい。
「馬鹿正直の人生」という副タイトルが、いいとおもう(笑)。この馬鹿正直さは、本多秋五が「志賀直哉の正直病」と評するものと、共通する。二人は途中で絶交をはさみながらも、生涯の友人であった。
さらに、これに武者小路実篤、柳宗悦などを加えていくと、それぞれ個性も作風も全く違う「白樺派」を、一本に結ぶ共通項が、「自他への無類の正直さ」、であることも見えてくる。
里見弴の独自な生き方と作風を短く表現すれば、<馬鹿正直と瀟洒がひとつになった遊び人>ということであろうか。こういってもなんのことかわからないが、里見の作品を読むと、すぐになっとくがいく。里見弴の小説には、「素の人」だけに見える、人間の心模様や生き方が、描かれている。
里見弴というひとは、羨望したくなるほど、本当の意味での粋人である。
評伝は、もっと早く出なければウソだったのだが、現在では里見弴の著書を入手するのもむずかしいらしいので、そういう時代とおもうよりしかたがない。