山田洋次監督は寅さんの映画を「愚兄賢妹」の話、と何かでいってたけど、この映画『おとうと』は、「愚弟賢姉」の話。
どうしようもない弟に手を焼く吉永小百合の姿は、やっぱり、弟と兄の違いはあれど、寅さんに手を焼く、妹のさくら(倍賞千恵子)を思い浮かべてしまう。
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結婚式をだいなしにしてしまう弟を演じる、笑福亭鶴瓶の酔っ払い演技は、顔が蒸気して、口もとはゆるみ、髪を乱して、迫真的。酔っ払いのだらしなさは、ひとごとでない(笑)。
「ばかだなあ」と、親戚からあきれられながらも、どこか憎めない弟をぴったりに演じている。
脇を固める蒼井優と加瀬亮が、やっぱりいい。蒼井優という女優は、映画を見るたびに可愛いらしさと存在感が、印象深くなってくる。
加瀬亮は、相手の引き立て役ができる貴重な若手俳優。山田洋次監督は、いい俳優を揃えたなあ、とおもう。
だらしなく、居場所も定まらない弟に、あきれ、怒って、ツンツンする吉永小百合がよかった。