かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

「黒澤明、生誕100年」の特集記事を読む





雑誌「一個人」の特集が、「生誕100年、黒澤明全30作品を完全鑑賞」。


95%が黒澤明の特集なので買う。新しく知るようなことはなかったが、豊富な写真とともに、黒澤明の数々の名画の解説を読んでいると、強烈に刺激されて、もう一度全作品を見直してみたい、という気持ちになってくる。


シンプルで力強い人物確執の描写、画面をはみ出しそうな緊迫感あふれる構図・・・黒澤明の映画を初めて見たときは、ビックリ仰天した。動的でありながら、一場面一場面が、静止画のように美しい。


『野良犬』を見たとき、画面から夏の暑さが立ち昇ってきた。犬が地べたにアゴを突き出して、舌で喘いでいる。


七人の侍』の豪雨、『蜘蛛巣城』の濃霧、『用心棒』の砂煙・・・黒澤明の映画は、人間の描写だけでなく、自然と人間とが一体となって、確執と対立のドラマを沸騰させている。


黒澤明を知って、日本映画を見る目が一変した。


成瀬巳喜男小津安二郎の、日常の細やかな描写が、どちらかといえば好きなのだけれど、池袋の文芸地下で、はじめて黒澤明の映画を見たときのビックリ仰天は、忘れられない。