かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

山田洋次監督『男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日』(1988年)


第40作 男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日 HDリマスター版 [DVD]
寅さんシリーズ40作目。全48作のなかで、シリーズとしては終盤に近くなっているけれど、寅さんはまだまだ元気だ。


満男は、大学の受験生。マドンナは、三田佳子で、女医さんを演じている。


寅さんは、小諸を旅して、この女医さんと知り合う。



小諸といえば、島崎藤村の「千曲川旅情の歌」がすぐに連想される。この作品でも、そうだ。

小諸なる古城のほとり
雲白く遊子(ゆうし)悲しむ


映画のなかで、この「遊子」というのは、寅さんのようなひとだ、という話題が広がる。


「遊子」を具体的にイメージするのがむずかしかったけれど、「寅さんのようなひとだ」と説明されると、ずっと「遊子」に親しみがわいてくる。


失恋した寅さんは、心に深い傷を負って、旅に出ていく。まさに「遊子悲しむ」の風景、そのものだ。



映画のなかで、寅さんが満男の受験校の下見に、早稲田大学を訪れる。大学と寅さんというミスマッチが楽しい。


そこでこんな短歌が詠まれた(記憶だけで書いているので、正確でないかもしれない)。

寅さんが早稲田へやってきて
やさしくなった午後の教室


なるほど、とおもう。


寅さんを見た後は、たしかに、わたしも、自分が少しやさしい気持ちになっていることに気づく。