寅さんシリーズ40作目。全48作のなかで、シリーズとしては終盤に近くなっているけれど、寅さんはまだまだ元気だ。
満男は、大学の受験生。マドンナは、三田佳子で、女医さんを演じている。
寅さんは、小諸を旅して、この女医さんと知り合う。
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小諸といえば、島崎藤村の「千曲川旅情の歌」がすぐに連想される。この作品でも、そうだ。
小諸なる古城のほとり
雲白く遊子(ゆうし)悲しむ
映画のなかで、この「遊子」というのは、寅さんのようなひとだ、という話題が広がる。
「遊子」を具体的にイメージするのがむずかしかったけれど、「寅さんのようなひとだ」と説明されると、ずっと「遊子」に親しみがわいてくる。
失恋した寅さんは、心に深い傷を負って、旅に出ていく。まさに「遊子悲しむ」の風景、そのものだ。
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映画のなかで、寅さんが満男の受験校の下見に、早稲田大学を訪れる。大学と寅さんというミスマッチが楽しい。
そこでこんな短歌が詠まれた(記憶だけで書いているので、正確でないかもしれない)。
寅さんが早稲田へやってきて
やさしくなった午後の教室
なるほど、とおもう。
寅さんを見た後は、たしかに、わたしも、自分が少しやさしい気持ちになっていることに気づく。