『純喫茶磯辺』の監督作品なので、ある程度期待して見にいく。35度以上の炎天下を池袋まで出るのだから、生半可の気持ちでは見にいけない(笑)。
チケットを買って、まだ時間があったので、少し池袋の町を歩いた。適当なコーヒーのお店があれば、涼しいところへ寄って、読みかけの『柳宗悦』を読もう、とおもっていたが、結局どこへも寄らないまま、映画館へもどった。
小さな映画館で、前から3列目に席をとる。
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『さんかく』は、ネットでおおよその内容はつかんで出かけたが、予想以上におもしろかった。これは、ぼくの基準でいえば傑作の部類にはいる映画だ。こういう作品に出会うと、うれしい。
倦怠カップルが同棲しているアパートへ、女性(田畑智子)の妹(15歳)が夏休みを利用して、泊まりにくる。
少女(小野恵令奈)は、15歳でどこまで意識があるのかわからないが、微妙な言動で、同棲カップルの男を翻弄する。男(高岡蒼甫)は、肢体はじゅうぶん大人なのに、心がボーヨーとしてつかめない15歳のふしぎな少女に、夢中になってしまう。同棲相手では、もう、こんな新鮮なトキメキは感じられなかった。
15歳の少女にとっても、分別のありそうなおとなの男性が、自分の挑発のとりこになっていくのをみるのは、楽しいゲームであって、つまらないはずはない。
少女にとっては<夏休み>の気まぐれな遊びだったが、おとなのはずの男の方が、それで終わらなかった・・・。
★
ダメ男と、その彼を愛する女性と、何を考えているのかよくわからない少女(妹)の<さんかく>の関係が、日常生活のなかで、ていねいに描かれていく。
この3人が、ムリのない、どこかに心あたりがありそうな自然さで、描かれている。それだけでも、十分見ごたえがあった。
この少女(小野恵令奈)は、まもなく故郷へ帰ってしまうけれど、そこから、また物語が、新たにすすんでいく。
少女が帰った後、二人の同棲カップルの関係は、決定的に何かが変ってしまっていた。
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後半は、ヒリヒリするような怖いドラマになっていく。
同じ状況になれば、自分もこのひとたちのように、ダメになるかもしれない、とおもう。彼らのように、自分自身をコントロールできず、どんどん惨めな気持ちになっていってしまうかもしれない。
この映画の、3人の主要人物は、それぞれストーカーまがいの行為をするシーンがある。
人のストーカー行為は気持ち悪がっても、自分のことになると、別だ。自分をコントロールできなくなって、好きなひとのあとを追いかけてしまう。
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映画が終わるとまた炎天下へ出る。でも、見た映画がよかったので、来てよかった、とおもった。
駅の西口へ出て、24時間営業の「ふくろう」へ寄り、ビールと酎ハイを飲んで、極貧荘へ帰る。
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