かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

吉田恵輔監督『さんかく』(2010年)をもう一度見た


昨年、夏の異常な暑さのなかを歩き、池袋の映画館で見たのを思い出す*1


今度は冬、妻がDVDをレンタルしてきたので、見る。



この作品、登場人物の心の動きをていねいに描いているので、おもいがけぬ傑作だ、というのが最初に見た印象だったが、DVDで見ても裏切られなかった。


高岡蒼甫(たかおか・そうすけ)、田畑智子(たなべ・ともこ)、小野恵令奈(おの・れいな)の3人の主要な俳優が、みんないい。


同棲相手の妹が夏休みに、アパートへ遊びにくる。その子が、可愛いくて、薄着で無防備なまま部屋にいると、ドキッとする。当惑からよろこびへ変化していく男の<スケベ心>が、次第に自己コントロールを逸脱していく。


これを演じる高岡蒼甫の演技が共感できる。


小野恵令奈演じるこの中学生の女の子は、どこまで意識的なのか無心なのかわからない性的魅力を発散する。その中学生の少女に夢中になっていく高岡蒼甫の男のダメさ加減が、しっかり描かれている。これってひとごとではないのだ(笑)。


ダメ男を愛する同棲の相手は、田畑智子。自分の好きな男性が急速に自分に冷たくなり、次第に嫉妬でふくれあがっていく。彼女は、彼がいくらダメでも、好きなのだ。男から離れられない女の弱さ、悲しさを、田畑智子がみごとに演じる。


何を考えているのかわからない思春期の少女を演じる小野恵令奈が上のふたりを上回るほど、絶妙な演技をみせる。


思春期の少女が発散する妖精の魅惑を滲み出していて、高岡蒼甫が彼女に惹かれていくのを、観客はムリなく受けとめてしまう。


派手な作品ではないけれど傑作だ、とおもう。



さんかく 特別版(2枚組) [DVD]

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*1:以前に書いた感想は、こちら。