かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

つげ義春作「もっきり屋の少女」〜石井輝男監督『ねじ式』(1988年)より


つげ義春の作品のなかで、方言をしゃべるおかっぱの少女が登場する作品は、「沼」(1966年)、「紅い花」(1967年)、「もっきり屋の少女」(1968年)と3作ある。


ほかにもあるかもしれないが、こまかなことはぬきにして、とりあえずこの3作である(笑)。


「沼」は、ほとんど説明のない、不可解な作品だ。マンガ雑誌「ガロ」に発表され、つげ義春の特異な作風を印象づけることになった作品でもある。


「紅い花」は、おかっぱ頭の少女と、その同級生の少年との交流を、抒情性豊かに描いている。この作品を気にいってしまえば、あなたはもう、つげ義春の世界から離れられなくなってしまう(笑)。


「紅い花」の少女は、もう1作「もっきり屋の少女」として再登場する。といっても、このふたりがそっくり同じだ、というわけではない。年齢も「もっきり屋の少女」の方が、いくつか上のようだ。


ただ、ふたりの少女は、ふしぎな方言をしゃべり、なにを考えているのか理解しにくい部分が、重なる。



石井輝男監督が映画化した『ねじ式』には、「もっきり屋の少女」が映像で可能な限り忠実に再現されている。つげ義春の作品は、静止画ならではの芸術で、動く映像にするのはむずかしい。


石井輝男はそれを十分承知で、つげ義春に最大限の敬意を払いながら、映像化に挑戦している。
http://www.youtube.com/watch?v=p_AVfla_rvs