かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

池袋新文芸座『生誕百年 快剣士 大友龍太朗映画祭』



小学生のころ、東映時代劇(というよりチャンバラ)映画のファンだったので、懐かしくなって、ひさしぶり池袋の新文芸座へ4日間通う。


1日2本立てで、見た8本は、

  • 加藤泰監督『丹下左膳 乾雲乾雲坤竜の巻』(1962年)
  • 長谷川安人監督『集団奉行所破り』(1964年)
  • 倉田準二監督『十兵衛暗殺剣』(1964年)
  • 工藤栄一監督『血文字屋敷』(1962年)
  • 松村昌治監督『怪傑黒頭巾』(1958年)
  • 松村昌治監督『柳生旅ごよみ 女難一刀流』(1958年)
  • 松田定次監督『鳳城の花嫁』(1957年)
  • 松田定次監督『丹下左膳』(1958年)




加藤泰監督『丹下左膳 乾雲乾雲坤竜の巻』

大友左膳の最後の作品らしいけれど、話は左膳が片目片腕を失うまでの経緯が描かれる。<武士道残酷物語>ともいえる重い作品で、東映痛快時代劇とは一味ちがって、おもしろかった。

■長谷川安人監督『集団奉行所破り』

海賊たちが、悪の巣窟である奉行所を襲って、ひとあわ吹かせよう、という話。小悪党たちが、奉行所破りをするなんてありえない設定をありえるように脚本を書いたのは、小国英雄。難問を突破するためにどうしたらよいか、黒澤明小国英雄たちが脚本で苦心したという、黒澤明監督『隠し砦の三悪人』を思い出させる。

■倉田準二監督『十兵衛暗殺剣』

主演は近衛十四郎の十兵衛で、大友龍太朗は、悪党の親玉。最後に十兵衛と切りあって、大友龍太朗は死んでしまう。

工藤栄一監督『血文字屋敷』

大友龍太朗の下級武士が、上司・同僚からひどいいじめにあう。現代にも共通する陰険ないじめを大友龍太朗は受けるが、東映痛快時代劇だから、後半は、そのいじめの上司・同僚の17人を、次々復讐していくという展開になる。彼の復讐を手伝う浪人が、大友龍太朗の二役で登場する。

■松村昌治監督『怪傑黒頭巾』

二丁拳銃で颯爽と大友柳太朗の怪傑黒頭巾が登場する。むかし鞍馬天狗と並ぶヒーローだった。怪傑黒頭巾も鞍馬天狗と同じく、幕末の時代、幕府と闘い、勤皇の武士たちの味方をする。

■松村昌治監督『柳生旅ごよみ 女難一刀流

大友龍太朗の十兵衛が旅に出る。十兵衛は、二枚目で剣術が強い。女にはおくてだが、黙っていても向こうから近寄ってくる(笑)。ほとんど悩みらしい悩みの存在しない、まさに痛快明朗時代劇(笑)。

松田定次監督『鳳城の花嫁』

松平の若殿は、周囲の持ってくる縁談が気に入らない。大事な嫁選びは自分で決めたいとおもい、ひとり旅に出る。うぶな若殿だが、周囲の助けもあって、最後は市井のなかに自分の好きなひとを見つける。東映時代劇のヒーローは、恋にはうぶでなければならないことがわかる(笑)。

松田定次監督『丹下左膳

大友左膳の決定版、ということになるだろうが、東映時代劇のご都合主義の集大成でもある。


出演している俳優が、 すごい。


「こけ猿の壺」をめぐるお家騒動は、山中貞雄監督の『丹下左膳』(1935年)と同じだけど、あのくすぐるようなお絶妙なおかしさは、ない。登場人物の性格もガラッと変わり、大味だが華やかな娯楽作品に生まれ変わっている。


大川橋蔵東千代之介、若手のスターが共演し、美空ひばり松島トモ子は、ミュージカルのように劇中で歌を歌う。大河内伝次郎は、ご存じ先代丹下左膳の人気役者。この映画に大河内が出演することで、丹下左膳役を、公認で大友柳太朗へバトンタッチししたことになるのだろうか。


橋蔵の道場をのっとろうとする山形勲たちの悪役一味を左膳がめった切りにするチャンバラが、クライマックスだ。



小学生のころ、好きだった東映時代劇と再会。チャンバラのたのしさを堪能した。