かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

西村賢太著『一私小説書きの日乗』を読む


一私小説書きの日乗

一私小説書きの日乗


2011年3月11日、東北大震災以降の西村賢太氏の日常が、日記風に綴られている。


特徴としては、よく飲みよく食べる。お酒類は、平均缶ビール1本、宝焼酎1本もしくは1本弱。つまみを食べた後でも、しっかり食事らしい食事をとる。


それから、編集者たちにしばしば立腹し、絶交して、和解する。この日記には、どんなことで怒ったのか、その原因は書かれていない。ただ同行している編集者のなにかが突然不愉快になり、断絶し、その後仲直りをしている、とそのことだけが書かれている。


駄々っ子を相手にしているようで、担当編集者はストレスが溜まりそうだ。


日記のなかに時々「買淫」という二文字が出てくる。風俗へいったことだと推測されるけど、そのあと、いつも大盛りの喜多方ラーメンを食べて帰るのが可笑しい。


それから小説にも登場する鶯谷の「信濃路」へ、芥川賞をとってからもよくいっているのがわかる。この「信濃路」は24時間営業なので、西村賢太氏は電車がなくなったような深夜でも、王子からタクシーを飛ばしてここへ飲みにいっている。


売れっ子になったあとの「自分」を、西村賢太氏の私小説は、どう描いていくのか、それも興味深い。