かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

成島出監督『ふしぎな岬の物語』を見る



朝川越を早く出て、「イオン板橋」で10時10分から成島出監督『ふしぎな岬の物語』を見る。


美しい岬と善良な人々が織りなす寓話のような作品。先に原作を読んでいたので、映画がかなり原作を改変していることもわかった。小さな挿話が、いくつか映画用に創作されている。


映画の中で重要な人物であるみどりさん(竹内結子)は、小説のなかでは記憶がなかった。が待てよ、ひょっとして画家の卵のような女性が出てきたが、あれはみどりさんだったろうか?-----とおもい、いま電子書籍で確認したら、やっぱりそうだった。


でも、映画のなかのみどりさんは、画家志望ではない。父の反対を押し切って男と家を出たのに、案の定、その男がいやになって故郷へもどってきた、そういう心に恥ずかしい傷を持った女性として描かれている。


笑福亭鶴瓶演じる「タニさん」は、原作のままでした。会社で左遷され、大阪行きが決まり、岬を去っていく。悦子さん(吉永小百合)への熱い想いを秘めたままで。


このエピソードがこの作品のいちばんのクライマックスかもしれない。笑福亭鶴瓶さんの、哀感の漂う演技に酔う。


阿部寛も、シリアスとコミカルがまじった役を、頑張っている。でも、個人的には是枝宏和監督『歩いても 歩いても』の阿部寛のほうが好きなのだ、やっぱり。


原作と映画で細部のちがいはあっても、この作品は、徹底的に美談と善意の結集した作品であることには、変わらない。