『夕霧花園』の中村有朋とヒロインのユンリン。
8月25日(水)、日にちが経って、天気忘れた。
渋谷「ユーロスペース」へ、トム・リン監督『夕霧花園(ゆうぎりかえん)』を見にいく。マレーシア映画。
亡き妹の夢だった日本庭園造りに挑むマレーシア人女性と日本人庭師の切ない恋を、戦中の1940年代、戦後の50年代、80年代の3つの時間軸で描き出す。1980年代、マレーシアで史上2人目の女性裁判官となったユンリンは、さらなるキャリアアップを図るべく奮闘していた。そんなある日、かつて愛した日本人庭師・中村が、終戦時に日本軍が埋めたとされる埋蔵金にまつわるスパイ疑惑をかけられていることを知り、彼の潔白を証明するため立ち上がる。
(「映画.com」より)
https://eiga.com/movie/94407/
この映画を称賛し、詳しく解説しているのが、keisukeさんのブログ。
https://keisuke42001.hatenablog.com/entry/2021/07/31/174704
keisukeさんのブログを読んで、見たいとおもった。しばらく予定があわなかったが、やっと見ることができた。
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激しい素材を、静かなタッチで描いた作品。
それを象徴するかのように寡黙で神秘的な日本人・中村有朋を演じる阿部寛が魅力的。
阿部寛に惹かれていくヒロインのマレーシア人女性・ユンリン(リー・シンジエ)の気品ある美しさ。
戦時中、いっとき(1942年〜1945年)マレーシアは、日本の占領下におかれていた。
ヒロイン・ユンリンの妹は、日本軍の慰安所に監禁され、慰安婦をつとめていた。彼女は、京都・天竜寺の庭を見て以来、いつか自分も庭造りをしてみたいとおもっていた。
しかし、敗戦が濃厚になると、日本軍は証拠隠滅のため、慰安婦たちを小屋へ閉じ込め、小屋ごと爆破してしまう。残忍きわまりない。ユンリンの妹もそのなかにいた。
戦後、ユンリンは、亡くなった妹の想いを引き継ごうとし、高名な日本人庭師・中村有朋(阿部寛)を訪ねて、庭園造りを依頼する。中村有朋は依頼を断るが、屈強な男たちにまじって庭園造りの重労働に加わることは許してくれる。そうして自分で覚えろという。
汗だくになって、大きな石を動かしたり、重い荷を運ぶユンリンの姿から、亡くなった妹を救えなかった自分への罪意識の重さ、と本気の覚悟が伝わってくる。
話は、そこからユンリンと中村有朋のラブ・ストーリーにもなるが、恋愛描写は抑制的で、くどくど描かれていない。それがいい。
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最近、政治の腐敗や犯罪について考えることが多い。映画も、そういうテーマのものをいつのまにか選んでいたりする。
最近では、『デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング』、『返校 言葉が消えた日』。「NHKの終戦ドラマ『しかたなかったと言うてはいかんのです』」もそう。
次々、時代に逆行する法律を強行突破しようとする安倍・菅政権になってからその思いが強くなった。
この映画『夕霧花園』でも、日本軍の慰安婦の残忍な扱いが出てくる。いま日本政府か一生懸命歴史のなかから打ち消そうとする慰安婦の問題だが、韓国との間だけにあったわけではない。それを、この映画を見ながらあらためて考えた。