かぶとむし日記

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飯田進著『地獄の日本兵 ニューギニア戦線の真相』を読む。

地獄の日本兵―ニューギニア戦線の真相―(新潮新書)

地獄の日本兵―ニューギニア戦線の真相―(新潮新書)


約230万人の軍人戦没者のなかで、過半数は戦闘によるものではなく、餓死や病死であるという。本書は、そのすさまじいニューギニア戦線の過酷な実態が語られていく。

「はじめに」を引用すると、、、

(略)---太平洋戦争中の戦死者数で最も多い死者は、敵と撃ち合って死んだ兵士ではなく、日本から遠く離れた戦地で置き去りにされ、飢え死にするしかなかった兵士たちなのです。

その無念がどれほどのものであったか、想像できるでしょうか。それは、映画やテレビドラマで映像化されている悲壮感とはおよそ無縁です。これほど無残でおぞましい死はありません。

(略)

二百数十万人に達する死者の最大多数は、飢えと疲労に、マラリアなどの伝染病を併発して行き倒れた兵士なのです。

この本には、著者が見た、あるいは経験した、戦いのヒロイズムなどどこにもない、ひたすらに密林のなかを何百キロも歩いて飢餓と極度の衰弱で死んでいく無惨な日本兵たちの姿が描かれている。

道のないジャングルを、蚊や蛭に血を吸われながら歩き、重い銃器や食料を背負って沼や川を渡り、絶壁の崖を上る。いつそこで死んでもおかしくなかったし、実際仲間はひとりふたりと倒れていく。

蛇、蛙、鼠・・・・・口にはいるものはなんでも食べる。蛭も食べた。なにも口にいれるものがなくなると、仲間の死肉を食べる地獄絵のような行為もはじまる。

歩いていると、腹や太ももなどをひきちぎられた遺体がころがっている。そして、それすら日常の風景のように感覚が鈍磨していく。

「あとがき」に、こう書かれています。

戦後、とりわけバブル景気華やかだったころ、数多くの戦友会によって頻繁に行われた慰霊祭の祭文に、不思議に共通していた言葉がありました。

『あなた方の尊い犠牲の上に、今日の経済的繁栄があります。どうか安らかにお眠りください』

飢え死にした兵士たちのどこに、経済的繁栄を築く要因があったのでしょうか。怒り狂った死者たちの叫び声が、聞えて来るようです。そんな理由付けは、生き残った者を慰める役割を果たしても、反省へはつながりません。逆に正当化に資するだけです。実際、そうなってしまいました。

なぜあれだけ夥(おびただ)しい兵士たちが、戦場に上陸するやいなや補給を断たれ、飢え死にしなければならなかったのか、その事実こそが検証されねばならなかったのです。

読んだ感想ではなく、引用ばかりになってしまいましたが、戦争の過酷さは、どれほど強調しても、しすぎるということはないようです。