かぶとむし日記

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濱口竜介監督『ハッピーアワー』を見る(1月10日)



上映時間5時間17分という長さにひるんでいたが、意を決して、濱口竜介監督『ハッピーアワー』を見にいく。


渋谷駅を降りて、妻を宮益坂の喫茶店で待たせ、シアター・イメージ・フォーラムで整理券付きのチケットを2枚購入。一部、二部、三部をあわせると、シニア二人で7,200円。


整理券をもって開場を待つまでに1時間ほど時間があったので、妻のいるところまで戻って、食事。オムライスとハンバーグがいっしょになったようなものを食べながら、ハイボールを飲む。お酒がうすい。


13時15分前、整理券順に客席へ。妻とわたしは整理券44と45。真ん中ほどのところに席をとれた。客席は満員。後ろに補助席として置かれた長椅子まで、びっしりひとがすわっている。早めにチケットを購入しておいて、よかった。5時間17分の長尺映画にこれだけひとが集まるというのはすごいなあ、とちょっと感動する。


第一部、第二部、第三部とも各回入替制で、それぞれの回で整理番号順に席替えをしなければならない。これがけっこう面倒だった。




30代後半に突入した、あかり、桜子、芙美、純。仲が良くどんなことでも屈託なく話せると考えていた彼女たちだが、純が1年にわたって離婚協議をしていたことを知る。離婚裁判に臨むものの、さまざまな理由から勝ち目のない純。それでも諦めようとしない彼女の姿を目の当たりにした三人は、自分たちの生き方を再考する。

「シネマ・トゥディ」より


スタートから新鮮。あかり、桜子、芙美、純の、目線を交わしながらの自然な会話。ドラマ的なオーバー・アクションや過剰なセリフはない。それは全編を通じて一貫している。小津安二郎成瀬巳喜男是枝裕和監督など、わたしは基本的に、こういう作品・演出が好き。


4人が隣人のように親しみ深く感じられる、と評していたのは「キネマ旬報」で読んだ川本三郎さんの映画評だったろうか。そのとおりで、自然自然気持ちが4人に寄り添っていく。彼女たちは、4人で会うと、とても幸せそうな笑顔で会話するが、ひとりひとりになると、それぞれに問題を抱えていて、表情は厳しくなる。ゆったりとした展開のなかで、そのことが次第に明らかになって、ストーリーが動いていく。



注目したいところはいっぱいあるけれど、長々と続くワークショップや朗読のシーンの扱い方にも、おどろく。


ワークショップのシーンは第一部のかなり長い時間を占めている。見はじめて、まだ4人の性格も立場もよくわからない。しかし、ワークショップに参加している4人の表情や言動から、それぞれの個性や性格が見えてくる。


映画の後半、能勢こずえという若い女性作家(25歳)の朗読シーンも長い。朗読の作品自体もいいかげんでなく、ひとつの完成した短編ができている。そういうところも、手抜きがない。しかも朗読シーンでは、その奥で主要人物たちの心の揺れ動きが描写されていて、どうなっていくのだろう、というサスペンスに目が離せない。


5時間17分は、長くない。むしろ、もっと4人の人生に寄り添っていたいくらいの気持ちだった。


映画館を出ると、午後7時を過ぎていた。外へ出て着ようとしたら、暑くて脱いでいたチョッキがなかった。どこかへ落としたらしい。宮益坂を降りて、信号をわたったところにある「北海道」で夕飯。鍋ものなど食べ物はおいしかったが、ハイボールウイスキーのお酒類がうすいのにはがっかりした。



映画『ハッピーアワー』公式サイト↓
http://hh.fictive.jp/ja/

濱口竜介監督インタビュー↓
http://www.nobodymag.com/interview/happyhour/index.php