かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

ロン・ハワード監督『ザ・ビートルズ〜EIGHT DAYS A WEEK ‐ The Touring Years』を見る(9月22日/9月24日)。



9月22日(木)の公開初日にはひとりで、9月24日(土)には妻といっしょに、ロン・ハワード監督『ザ・ビートルズ〜EIGHT DAYS A WEEK ‐ The Touring Years』を見た。1963年から1966年まで、ビートルズがツアーをやめるまでの多忙な4年間を中心に描かれている。


わたしがビートルズを知ったのは、1964年の初夏。ビートルズの新譜をたのしみに待ち、音楽雑誌の新しい情報に目をひからせていたあのころの記憶がよみがえってくる。あれからもう50年以上が経ってしまって、ジョン・レノンジョージ・ハリスンは、他界してしまった。


1960年代はビートルズの動く映像が少なかった。だから、ビートルズの映像を見ることは貴重のうえに貴重だった。『ビートルズがやってくる ヤァ!ヤァ!ヤァ!』や『HELP!』はなんどもなんども映画館の上映情報を追って見た。映画ではあるけれど、いっしゅのビートルズの追いかけをやっていたようなもの(笑)。ライブ映像となると、もっと少なかった。


短編『ビートルズ・カムズ・タウン』は映像時間は短かったけど、もっとも生々しいビートルズのライブで興奮して見た。それから、テレビでは1964年の「エド・サリバン・ショー」のライブが、日本では約1年後、日本版の編集で放送された。アメリカで視聴率70%を記録したという、あの有名なライブをテレビにかじりついて見た。ビートルズがライブ活動を停止するまでの1966年までに、日本のファンが見ることのできた動くビートルズは、そのくらいではなかったろうか。


註:「シェア・スタジアム(いまはシェイ・スタジアムと表記するらしい)のライブ映画」を見たのは、ビートルズ来日の前なのか、後なのか、それがはっきり思い出せない)



そして突然ふってわいたように、1966年の夏、本物のビートルズ日本武道館にやってきた。ビートルズは演奏しながらどんな動きをするのか、演奏の小さなクセでもなんでもいいから知りたい、必死にオペラグラスで4人を追った。


ビートルズの武道館コンサートで、演奏が聞こえたか聞こえなかったか、そういう話題をいまでも雑誌で見たり、耳にしたりする。


結論からいえば、はっきり聴こえた。あとで見た「ワシントンDCコンサート」や「シェア・スタジアムのライブ」に比べれば、問題にならないくらい日本のファンはおとなしかったのだ。厳戒態勢下のコンサートで、立ち上がると、通路にびっしり並んだ警備員から椅子にすわらせられたし、垂れ幕をかかげるとやはり彼らが飛んできてたちまし没収されたし、いまの自由にライブを見る感覚とはまったくちがっていた。


監視がいきとどくように、ビートルズの日本公演は、会場の照明もつけっぱなしのままだった。ビートルズ日本公演のビデオ映像がクリアなのは、会場が明るかったせいもあるかもしれない。


それにしても、なぜ歓声や悲鳴でビートルズの音楽は聞こえなかった、というひとがいるのだろうか?


この答えは、先日ビートルズ・クラブの来日50周年イベントに出演した石坂敬一氏(元東芝ビートルズ担当者)の発言がもっとも核心をついているとおもう。その日のイベントを記録したビートルズ・クラブの会報誌10月号から引用してると、、、

石坂:ビートルズの演奏に慣れていた。よく聞いていたから、よく聞こえました。翌日の新聞を見ると、画家とか彫刻家、写真家なんかが「嬌声がすごくてほとんど聞こえないまま終わった」って勝手なこと言ってましたね。「何を言ってるんだ、聞こえてたよ」と私は言いたい(会場拍手)。


要するに、ビートルズ・ファンの濃度の問題で、レコードを繰り返し聴いていたひとには、聴こえたし、ほとんど事前に楽曲を聴いてなかったひとには歓声にまじって聞こえなかった、ということだろうとおもう。ちなみに、文中の(会場拍手)は、わたし。石坂敬一氏の的を得た答えに、おもわずひとりでパチパチ拍手してしまった。


横道にそれたけれど、あのころ、今回のこの映画のようなビートルズの大量の映像が見られたら卒倒していたかもしれない(笑)。ビートルズの映像がふんだんに見られるようになったのは、1970年にバンドが解散してから。当時日本では、来日前に発表されたシングル・レコード「ペーパー・バックライター」/「レイン」のプロモ・フィルムも公開されなかったし、プロモ映像じたいの存在も知らなかった。


プロモ映像がレコード発売と同時期に、テレビなどで見られるようになったのは、ビートルズ来日後の、「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」や「ペニー・レイン」がはじめてではなかったか。



というわけで、映画館の大きなスクリーンでビートルズのライブ映像やウイットに富んだインタビューを見る幸せに酔う。ジョン・レノンの存在感の凄みをあらためて感じさせてもくれる。


1963年から1965年までのライブ・バンドとしてのビートルズの演奏は、劣悪といわれる音響設備や観客の歓声のなかでも、圧倒的にすばらしい。


残念なのは、時間の関係もあって、ほとんどの楽曲がぶつ切りになっていること。


しかしそれを補完するように、最後、シエア・スタジアムのライブが、まるごと付録でついている(ただし、このシェア・スタジアムの映画は、むかしからコンサートの全部を完全に収録していない。ジョージが歌う「みんないい子」がカットされているため、ジョージがリード・ヴォーカルをとるナンバーがない)。


映画館の大きな画面で、大きな音で、からだいっぱいにビートルズを感じる幸せを堪能した。


ザ・ビートルズ〜EIGHT DAYS A WEEK ‐ The Touring Years』予告篇↓
https://www.youtube.com/watch?v=3Rs_hQP9JbM