かぶとむし日記

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ポール・マッカートニーの新譜『マッカートニー III』が12月18日に発売!!




当初12月11日に発売の予定だったポール・マッカートニーの新作『マッカートニー III』は、1週間遅れて、12月18日に発売される予定。


NO.1アルバム『エジプト・ステーション』(2018年)から2年しか経っていない。


まだ新作を発表するつもりはなかったけど、コロナ禍で自宅へこもっていたら曲が溜まってきたので、アルバムをつくったというから、才能のあるひとは花咲爺さんみたいに枯れ木に花を咲かせる(笑)。


ポール・マッカートニー、健在。


それを確認するだけで、まずうれしい。ポールもわたしも老人だから、いつどちらが欠けてもおかしくない。


レコードの発売日が待ち遠しいという感覚は、ビートルズの現役時代から現在も変わらない。「ポールの新譜の発売を待つ」ということがこれほど愛おしいとは。ジョンジョージの新譜を待てないいま、ポールリンゴの新作がいよいよ貴重なものになる。



『マッカートニー III』というタイトルだから、『マッカートニー』『マッカートニー II』というアルバムが、以前に出ている。


しかし、この「マッカートニー」名義のふたつのアルバムは、困難のなかで発売された。



アルバム『マッカートニー』が発売されたのは、ビートルズの解散が噂されるようになった1970年






そのころは、現在のようなタイムリーにニュースははいってこないけれど、ビートルズのメンバー間がギクシャクしていることはなんとなく伝わってきた。


ジョン・レノンオノ・ヨーコは、「前衛芸術」を次々発表。


内容は、、、

  • ふたりの全裸(ホンマの全裸)ジャケットのアルバム。
  • 逃げる少女をカメラが追い詰めていく、レイプの短編映画。
  • 白人・黒人・黄色人種など、ひとの属性を否定するために、袋のなかにスッポリはいってインタビューを受けるバキズム。
  • etc


どれも、わたしには奇行にしかみえなかった。


ビートルズのスタジオは、メンバーとスタッフ以外、例えば奥さんや恋人をいれない、というのは暗黙の了解事項になっていた。しかし、いとも簡単にジョンはヨーコを連れてきて、それを破る。ヨーコが流産すると、スタジオにベットまで運び込んだ。


マネージャーのブライアン・エプスタインでさえビートルズのレコーディングに口をはさむことを許されなかったのに、ヨーコはその不文律も突破した(笑)。


これをポール・マッカートニージョージ・ハリスンリンゴ・スターが快くおもうはずがなかった。


ポール・マッカートニーは、ビートルズを存続させたかったが、ジョン・レノンはヨーコとの単独活動にのめりこみ、ジョージ・ハリスンは、ビートルズよりエリック・クラプトンラニー&ボニーレオン・ラッセルとのセッションをたのしんだ。リンゴ・スターは、映画出演に新しい自分の道を探りながら、ジョージに助っ人を求められると、いつでも馳せ参じた。


バンドの存続に絶望したポールは、最後のビートルズのアルバムアビーロードを完成させると、スコットランドの農場へひっこんでしまった。


(正確には、それ以前に録音したアルバム『レット・イット・ビー』の追加録音に、ジョージ、リンゴと3人で集まっている。ジョンはもう参加していない)


「ポール死亡説」が流れたのはこのころ。ポールがどこにいるのか、確認できなくなったため、いろいろな痕跡をポールの死亡の証拠と見立て、誰彼となく、不吉なうわさが広まった。


わたしもポールの近況が知りたくて、当時学校の図書館にあった英文雑誌の「Life」を毎号ながめていた。この雑誌に、ときどきビートルズ関連の新しい記事が出ていたから。


英語はわからなかったが、熱情のたまもので、ビートルズの記事なら、おおよその意味がつかめたからすごい(笑)。


あるとき、その「Life」の表紙に、ポールが髭だらけの顔で「ぼくは元気だよ」と赤ちゃんを抱いて写っているのを発見。


雑誌「Life」のスクープだった。


と、あとからあとから、いろいろ細々したことを思い出してしまうけれど、『マッカートニー』というアルバムは、この「隠遁時代」に、スコットランドの農場で、ギター、ピアノ、ベース、ドラム・・・全部の楽器をポールひとりで演奏してつくった、文字通りのソロ・アルバム。


アルバムの評判はどうだったか?


商業的には、全英2位。アメリカでは1位で、成功。


しかし、酷評された。じっさいわたしにも、アルバムがビートルズの抜け殻のように聴こえた。


まず、アルバム13曲中5曲がインストルメンタル。ポールの新譜にインストルメンタルを期待するのは、ジョンのアルバムの半分をヨーコが占めるのと同じくらいありえない(笑)。


いい曲はあるのに、アルバム全体がひどく散漫に感じられた。





Paul McCartney & Wings - Maybe I'm Amazed [Live] [High Quality]
アルバムを代表する曲。1976年ウイングスの全米ツアーの映像。





Paul McCartney - Junk - Lyrics
アルバムで一番美しい曲。音源は、公式録音のもの。





それから10年。


1980年は、ビートルズ・ファンにとってはできればもう一度やり直したいような不幸な1年だった。


1980年の1月には、ポール・マッカートニー大麻所持のため日本で逮捕された。


12月にはジョン・レノンマーク・チャップマンという自己顕示欲の強い狂人に射殺された。



1980年の1月、ポール・マッカートニー&ウイングスの来日を、日本のファンは、待っていた。


が、成田空港の税関を通過するときポールの所持品から大麻が発見される。大麻がポールにとっては酒やたばこより無害なものという意識があったにしても、日本の法律が厳しいことは知っておくべきだった。以前、麻薬所持で逮捕歴があることから日本の来日が事前に中止になった前歴もあるのだから。


ポール、収監。来日公演は全部中止。


日本武道館では、ウイングスの公演を求める署名活動に、泣きながらサインするファンが長い行列をつくった。


ポールは、 10日間ほど収監され、日本から送還された。



説明が長くなったけれど、日本のファンを失望させた逮捕のあとに発表されたのがアルバム『マッカートニー II』



マッカートニーII(紙ジャケット仕様)

マッカートニーII(紙ジャケット仕様)




ポールは、ウイングスが自然消滅の状態だったので、再び全部の楽器を自分で演奏し、この作品をつくった。


わたしは、公演中止の失望感も重なり、このアルバムをあまり多く聴いていない。聴くと、来日中止を思い出してしまう。アルバム全体にピコピコと鳴るシンセの音も好きでなかった。





Paul McCartney And Wings - Coming Up (Live in Kampuchea 1979)
アルバムの顔「Coming Up」。1979年カンボジア難民救済コンサートから。





Paul McCartney - Waterfalls (Official Music Video)
「Waterfall」。ポール・マッカートニーにしか作れない美しい曲。大好き!



『マッカートニー』から50年。
『マッカートニー II』から40年。


12月18日に『マッカートニー III』が発売される。これまでのニュー・アルバムで、ポールは、先行で1曲か2曲聴かせてくれたのだけれど、今回はそれはなし(12月5日、現在)。


宅録だということだけはわかっている。ポールが全部の楽器を演奏していることも。あとは、じっと待つしかない(笑)。