かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

『この世界の片隅に』と『聖の青春』をハシゴする(11月19日)



11月19日土曜日。イオン板橋の朝一番、片渕須直監督『この世界の片隅に』を見にいく。


アニメには抵抗感がいまでもあるけれど、この作品は戦時下の庶民の生活をていねいに描いていてとても見ごたえがあった。片渕監督は、舞台になっている呉や広島の戦前の風景をなんども当地にいって取材したという。その成果あって、空襲や原爆で破壊される前の町並みが美しく描かれている。あたりまえだけれど、戦争中にも、庶民にはふつうの暮らしがあって、日常の営みがあった。日常のなんでもない幸せ。それを戦争がこれでもかこれでもかと破壊していく。


主人公のすずは、のんびりしたかわいい女性。結婚して、夫と仲もいい。夫の両親も、性格のキツい義姉も、すずを受けいれていく。すずの優しい人柄を愛していく。戦争さえなければ・・・。


先日見た新海誠監督の『君の名は。』もよかったけれど、テーマに痛切な共感を感じなかった。おそらく世代のせいだろう。『この世界の片隅に』は、そういう距離感がなく、気持ちを素直に導入できた。人にも薦めたくなる作品。


この世界の片隅に』予告編↓
https://www.youtube.com/watch?v=kczb7IJJg0g



午前中の用事をすませた妻がきて、午後、森義隆監督、松山ケンイチ主演の『聖の青春』を見る。



この映画は、NHKの将棋番組などで見たことのある実在の棋士村山聖(むらやま・さとし)を描いた作品。病いをかかえながら、羽生善治(はぶ・よしはる)名人に勝つことを生きがいとして闘う姿は、戦国時代の武者を見るよう。しかし、村山聖の生涯は、29歳で燃え尽きてしまう。


松山ケンイチは、村山聖に近づくよう27キロ体重を増量したというから役者はすごい。それでも村山聖本人と比べるとまだ痩せているが、増量した気迫は十分伝わってくる。これまで松山ケンイチという役者にはそれほど感動を覚えたことがなかったが、この作品ではじめて好きになった。


映画『亀岡拓次』(横浜聡子監督)で主演した安田顕が出ていて、うれしかった。あの映画以来すっかりファンになってしまって、映画に出ていて顔を見るだけでうれしくなる。今回の役は棋士のひとりで、立派な顔をしていた。


村山聖の師匠・森信雄を演じるリリー・フランキー、うまいなあ、このひと・・・っていつも感心してしまう。棋士の実力としてよりも、有能な弟子をたくさん育てた名師匠として知られる森信雄を、味わい深く演じている。


『聖の青春』予告編↓
https://www.youtube.com/watch?v=9KRblK92ubw