- 作者:島田 荘司
- 発売日: 2009/03/12
- メディア: 文庫
4月12日、日曜日。
午前、クルマで20分ほどのところにある水上公園へいく。家にばかりいると運動不足になるので、散歩するのが目的。
お店などは閉店しているけれど、公園じたいは閉まっていない。広い公園なので、ひととひとが近くで接触する心配もない。
散歩コースを50分ほど歩く。
コースがそろそろ終わりになるころ、八重桜が咲いていて、目をたのしませてくれた。
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午後、ソファに寝ころんで、島田荘司著『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』をKindleで読む。1984年に刊行されたミステリー小説。当時読んでおもしろかったが、今回電子書籍にあるのを発見したので、ひさしぶりに読んでみる。
夏目漱石(当時は、夏目金之助)がロンドンへ留学したのは、1900年(明治33年)から1年半ほど。むやみやたらと本を買うので国から送金されるお金ではたりず、生活をだいぶ切り詰めて暮らしていたようだ。
食事代も切り詰めて、ビスケットを公園の水で流し込んで腹を満たしたこともある、と漱石は書いている。
貧乏生活がたたってか、「夏目が神経衰弱になっている」、という報告が、留学を命じた文部省へ届いたりしている。
この小説では、漱石が借りている下宿に幽霊が出る、ということで、ロンドンで有名なシャーロック・ホームズに相談しにいくところから、ふたりの人気キャラクターが対面する。
章ごとに漱石とワトスン博士の文章がいれかわる。
ある章は、漱石的文体で彼の「留学日記」が綴られ、次の章には、わたしたちがジャーロック・ホームズ・シリーズでなじんだワトスン博士の事件報告が出てくる。
ホームズは、麻薬を常用していた、とすでに発表されているワトスン博士の報告にもあるけれど、はじめ漱石は、言動のおかしなホームズと対面しておどろく。
そして、幽霊のことをホームズに相談しにきたことを後悔する。
しかしホームズ・ファンの読者には、彼の奇妙な行動は、いかにもホームズらしくもあって、読みながらクスクス笑ってしまう。
「ミイラ事件」が、漱石とワトスン博士の、ふたつの視点から語られる、というミステリーの構成になっている。
わたしは、扱われる事件以上に、漱石、ホームズ、ワトスンの3人の出会いと別れがおもしろかった。