11月4日、日曜日。
妻の運転で「ウニクス南古谷」へいき、12時10分から三島有紀子監督の『ビブリア古書堂の事件手帖』を見る。
鎌倉の片隅に佇む古書店「ビブリア古書堂」の店主・栞子(しおりこ)と店を手伝うことになった青年・大輔が、大輔の祖母が遺した夏目漱石の本に記されたサインと、太宰治の希少本にまつわる秘密に迫っていく。
(「Movie Walker」より)
https://movie.walkerplus.com/mv64113/
鎌倉、古書店、夏目漱石、太宰治・・・わたしの好きな素材ばかりで構成されている映画。しかも主演は、黒木華だし。
原作は未読のまま映画を見にいく。
映画のなかで重要なキーワードとして扱われている夏目漱石の「それから」は、漱石作品のなかで、わたしがいちばん好きな小説かもしれない。なんどとなく読み返している。10代のころは、主人公・代助のような高等遊民の生活に憧れもした。
森田芳光監督が撮った映画『それから』(1985年)も、期待以上によかった。原作を裏切らなかった。主演の松田優作(長井代助)もよかったし、藤谷美和子の三千代がきれいだった。
代助は、むかし一種の義侠心から、友達の平岡のために、自分の好きな女性・三千代を、自らすすんで結婚するように働きかける。それを代助は、友情の証しだと信じていた。
しかし、平岡夫婦が、仕事が思うようにいかず、夫婦の関係もギクシャクして東京へ帰ってきたとき、代助の三千代への想いが再燃する。
それを代助は、自然(な心)を無視して行動した自分への「自然からの復讐」と感じ、もう一度自分の気持ちに自然になろう、と決心し、三千代へ愛情を告白する。
僕の存在には貴方が必要だ。どうしても必要だ。僕はそれだけのことを貴方に話したいためにわざわざ貴方を呼んだのです。
この代助が三千代への愛情を告白したセリフは、映画『ビブリア古書堂の事件手帖』でも引用され、使われている。
過去にあった祖母の秘められた恋愛(不倫)が描かれていて、そこに漱石の「それから」が引用されているけれど、わたしには、こじつけ以上のものとしか感じられなかった。祖母の恋愛の相手は、太宰治似の作家志望の青年(東出昌大)で、太宰治の小説もおもわせぶりに引用されるシーンもあるけれど、そこに深い意味を期待しないほうがいい。
最初に書いたように、わたしには魅力的な素材が並んだ。鎌倉、古書店、漱石、太宰・・・だから、見ていて退屈はしない。黒木華は、やっぱりふんいきあるし。
でも、素材倒れで、ご都合主義のストーリー展開にはがっかりして映画館を出た。
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帰り、上尾まで走って、日帰り温泉「利久」へ寄る。