7月16日、木曜日。
コロナの感染がとまらないなかで、映画館へいくことがすくなくなった。上映している作品をみても旧作がおおいので、よけい足が向かない。
でも、大森立嗣監督、長澤まさみ主演の『マザー』は見にいきたいとおもっていた。
大森立嗣監督は、
『まほろ駅前多田便利軒』(2011年)
『かぞくのくに』(2012年)
『さよなら渓谷』(2013年)
『セトウツミ』(2016年)
『菊とギロチン』(2018年)
『日々是好日』(2018年)
作風はいろいろだけれど、わたしの好きな作品がおおい。さらに今回、主演が長澤まさみでは、見逃せない(笑)。
アパートの近くの「イオンシネマ板橋」、11時25分からの上映をネットで予約する。
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おでこで体温をはかり、アルコール消毒液で手をぬらす。もう一般的になってきたコロナ対策の風景。
前後左右にひとをいれないゆったりした座席の配分。ふだん膝のうえにかかえていなければならない荷物を隣りへ置けるのは、うれしい。しかし、映画館側はこれでは収益があがらないだろうな、って毎回心配になる。
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母親・長澤まさみは怪物か?それとも聖母?映画『MOTHER マザー』予告編
男たちと行きずりの関係をもち、その場しのぎで生きてきたシングルマザーの秋子は、息子の周平に異様に執着し、自分に忠実であることを強いてきた。そんな母からの歪んだ愛に翻弄されながらも、母以外に頼るものがない周平は、秋子の要求になんとか応えようともがく。身内からも絶縁され、社会から孤立した母子の間には絆が生まれ、その絆が、17歳に成長した周平をひとつの殺人事件へと向かわせる。
(「映画.com」から)
https://eiga.com/movie/92550/
最初に長澤まさみの水着姿が出てくる。美しくない。弛緩したからだの肉が、水着からはみだしそうだ。
長澤まさみの美しさをかき消してしまうようなこの映画の徹底ぶりが、ここからはじまっている。
子供時代から、母の倫理観のなさを少年はみている。働く意思がないから、お金はない。少年が食べ物を盗んで調達する。
近くに釣れそうな男性がいれば、たらしこんで、寄生して生きる。少年が見ているそばで、男とセックスをはじめる。
生きるために、しかたなくそうしている、というわけではない。食うための手段でもあるけれど、セックスそのものを、たのしんでいる。この母には、欲望をコントロールする機能がない。
こんな怪物を、長澤まさみが演じている。
こういう設定の映画は、最後にこの女にもじつはひとに理解されない悲しい背景があった、というようなヒューマニズムの結末が予測されるが、それがまったくない。最後まで乾いている。
『かぞくのくに』や『さよなら渓谷』や『光』の監督だな、とおもう。ヒューマニズムでまとめない。
少年は、母から離れれば、更生するチャンスはあった。
自身不幸な少女時代を送った女性(夏帆)は、少年を怪物のような母から引き離そうとするが、少年は、それを望まない。母が好きだという。
毒蛇に飲み込まれた小動物のように、抵抗する意欲をもたない。殺人までいきつくが、少年は母の指示はなく、自分ひとりでやった、という
少年を殺人に追いやった母の方は、反省も後悔もなく、少年をかばおうとする様子もない。
「この母は、聖母か、怪物か」というようなコピーがあったけれど、まちがいなく聖母ではない(笑)。
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長澤まさみが美人女優をすてた意欲作。
プロデューサーは、『新聞記者』で話題になった河村光庸。このプロデューサーの作品は、ひとつひとつに企画者の意思が感じられる。
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