8月30日㈬、炎暑。
池袋の「シネマ・ロサ」で、シェン・ユー監督の『兎たちの暴走』を見る。
あとになって「シネマ・ロサ」もネット予約ができるようになったことを知ったが、このときはまだわからなかったので、時間より早めに映画館へ行く。
中国の新鋭女性監督シェン・ユーが、母娘が娘の同級生を誘拐した実在の事件に着想を得て撮りあげた長編デビュー作。
(略)
ある日、シュイ・チンが生まれて間もない頃に家族を捨てて街を出た実母チュー・ティンが戻ってきたことで、シュイ・チン(17歳)の日常は一変する。
(「映画.com」より)
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ハナから脱線します(笑)。
幼いころに家庭を捨てて出ていった母……という状況を想いうかべると、わたしはどうしても小さなジョン・レノンを連想してしまう。
ジョンの父が家を出たあと、母・ジュリアも、恋人をつくって家を出ていく。
ジョンはひとり残された。
彼は、厳格な伯母・ミミのもとで育てられる。
しつけに厳しいミミに育てられたジョンだが、彼はその反動からか、学校から見放されるような問題児になってしまう。ジョンが、教室にいないと、教師はかえって喜んだ。
同級生たちの親は、自分の子供が、ジョンと遊ぶのを嫌った。
少年ジョンには、安心できる居場所がなかったとおもう。
そのジョンのところへ、ある日、失踪していた母・ジュリアが姿を現す。
ジュリアは、姉のミミと同じ姉妹とはおもえない陽気な女性で、ジョンは、すぐ母が好きになった。
彼女は、流行のポップスも好きで、レコードをかけ、一緒に踊り、ジョンにバンジョーの弾き方を教えてくれた。
(しかし、悲しいことに、母・ジュリアは、まもなく非番の警官のクルマに轢かれて亡くなってしまう)
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すみません、いきなり脱線しました。
ジョンに起こった悲劇は、今回の映画とはちがうが、幼いときに自分を捨てた母と再会し、その母がとても魅力的だったことで、捨てられた恨みよりも、彼女に惹かれていく……という母と子の関係に、共通なものを感じた。
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『兎たちの暴走』へ話を戻す。
母・チュー・ティンは問題を抱えていた。悪い組織と関わりを持ち、借金があった。その金を用意しなければ、母の身が大変なことになる(こう筋書きを書くと、よくある安っぽいドラマみたいだけど)。
母と娘は、お金持ち同級生の誘拐を企てるが、手違いが起こってしまう……。
母を演じたワン・チエンが美しい。17歳の少女、シュイ・ティン役のリー・ゲンシーも、賢そうで愛らしかった。
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「映画貧乏日記」さんがこの映画を詳しくアップされているので、貼っておきます。映画でピンとこなかった部分も、このブログ記事を拝見して、確認することができました。
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帰り、西口の居酒屋「青龍」へ寄る。
午後3時から開店なので、ありがたい。フィリップ・ノーマン著『ポール・マッカートニー ザ・ライフ』の続きを読みながら、飲む。
ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スターが、ビートルズ解散後はじめて共同作業で発表した(新曲2つと未発表録音を収めた作品集)、アルバム2枚組3セット『ビートルズ・アンソロジー(1.2.3)』(1995年)の製作内幕も、興味深い。
ポールとジョージの長年のわだかまりは、この共同作業で解消したわけでもなかったようだ。ポールはともかく、ジョージは、ビートルズ後期のポール独裁への嫌悪感がまだ残っていた。
しかし、そういうメンバー間にくすぶる軋轢とは裏腹に、アルバム『ビートルズ・アンソロジー』(1.2.3)は、内容から考えると、よく売れた。
内容は、2曲の新曲をのぞけば、音の良くない未発表ライブ、完成前のデモ音源などを集めたマニアックなアルバムなのに、チャートの上位まであがった。
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そして、、、
ポール・マッカートニーを悲嘆の崖に突き落とした、愛妻・リンダの乳がんとの闘い、その死(1998年)が描かれる。
その間も、ポールは音楽の仕事をやめない。リンダもそれを願った。
ポールはリンダとの最後の共同作業になったアルバム『フレイミング・パイ』(1997年。この時期の傑作作品だとおもう)を発表するかたわら、はじめてクラシック作品にも挑戦する(クラシックのポール・マッカートニー作品は聴いていないので、よくわからないが)。
いまは、その辺まで。あとは、いよいよ最終章へ向かう。