児玉駅のホーム。
10月31日、晴天。
ローカル線(八高線)にのって、日帰りの小さな旅をしてみた。目的地は、降りたことのない無人駅「児玉」(埼玉県)。
1時間30分くらいの所用時間か(とおもったら、結局、乗換え待ちの時間が長かった)。
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ドアをあけるときはドア横の「開」のボタンを押さなければならない。「開」のボタンを押さないままドアの前で待っていると、電車は走り出してしまう(笑)。
「高麗川駅」で乗換え、八高線へ。「高麗川駅」の待ち時間、約1時間。電車は来ているので、乗車して、座席でウトウトした。
いつのまにか眠ってしまって、「ハッ」と目が覚め、「いまどこだ」と焦ったら、まだ「高麗川駅」に停車していた。
八高線にはいると、窓に、緑が近く迫ってくる。遠くに山が見える。秩父か? 旅の気分になれる。
電車は「小川町駅」止まり。ここでもまた1時間待ちが発生した。
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50歳くらいの女性が、1時間も電車が出ないと、ケータイで焦ったように誰かに電話していた。
こっちはもともと急ぐ用のない暇人(ひまびと)なので、小川町駅で一旦降りて、駅の周辺をぶらぶらする。
人通りも少なくて、駅前なのに、お店が開いてない。ラーメン屋さんがあったが、昼近いのに、閉まっている。いま営業しなくていつするんだろう?
小川町駅を過ぎると、「寄居駅」を通り、「用土(ようど)」、「松久(まつひさ)」、「児玉(こだま)」と無人駅が続く。
「児玉駅」で降りたが、「小川町」以上に駅前は静か。やっぱり駅前食堂のようなものもない。歩行者も少ない。
駅前の通りにも、人がいない。
昼時なので何か食べてビールを飲みたかったが、そういうお店は見当たらない。
駅にあった周辺地図を見ながら歩く。
「塙保己一記念館」へ向かう。
一応の目的は、「塙保己一(はなわ・ほきいち)記念館」としておいた。他に目的物がみつからないので。
川本三郎著『ひとり遊びぞ 我はまされる』には、吉田健一著『汽車旅の酒』(未読)をもとに、「児玉」町が紹介されている。
(吉田健一は)名所旧跡など何もない町を以前から探していて、それを「八高線の児玉」で見つけたという。何もないとはいっても、やはりそこに行きたくなる何かがなければ困る。「昔は秩父街道筋の宿場で栄えた児玉の、どこか豊かで落ち着いている上に、別にこれと言った名所旧跡がない為ののんびりしたい心地にそれがある」。
唯一、児玉町には「塙保己一(はなわ・ほきいち)記念館」がある。しかし、わたしは塙保己一を知らなかった。
川本三郎氏に頼るしかない。
児玉は、江戸後期の盲人の国学者、塙保己一(一七四六〜一八二一)の出身地。七歳のときに失明、盲人の身でありながら江戸に出て国学を学び、四十年以上かけて失われつつある各種文献を集めた『群書類従(ぐんしょるいじゅう)』を完成させた。郷土の誇る偉人である。
「塙保己一(はなわ・ほきいち)記念館」に向かう。駅から10分くらいか?
静かな町を歩くのは悪くなかったが、「記念館」は、月曜日で休館だった。うっかりしていた。こういう施設は、月曜日休館が多いことを忘れていた。
記念館の前の「塙保己一像」。
しかし、その代わりに近くで開いている「蕎麦屋」さんを発見した。
わたしが歩いてきたところでは、唯一の食事処だ。
ビールに、肉じゃがに、もりそばを注文。ビール1本目(中瓶)はまたたくまに飲んでしまったので、もう1本おかわり。今度は少しゆっくり飲む。
「名所・旧跡のない町の魅力」といっても、それをしっかり味わえるのは、旅の中級者か高級者で、わたしにはどこかにより掛かる取っ手がないと、楽しむのはむずかしいな、と今回おもった。