5月17日㈬。
「ヒューマントラスト有楽町」へ、ポーランド・イタリア合作映画『EO イーオー』(イエジー・スコリモフスキ監督)を見にいく。
サーカス団で、平穏に暮らしていたロバ(EO)が、人間たちに連れ出され、不条理な放浪を余儀なくされてしまう……。
賢い主人公の動物が活躍する映画ではない。自ら意思を持たないロバが、人間の身勝手な欲望に翻弄される、ちょっと哀しい映画。
でも、それをセンチメンタルには描いていない。映像もシャープというのか、新鮮でおもしろかった。
帰り、上野で降りて、立呑みの『たきおか』へ寄る。瓶ビール(大瓶)と黒ホッピーと酎ハイで酔う。
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松原文枝監督。
5月24日㈬。
「新宿ピカデリー」へ、ドキュメンタリー映画『ハマのドン』(松原文枝監督)を見にいく。
2019年8月、「ハマのドン」と呼ばれる91歳の政治家・藤木幸夫が、横浜港へのカジノ誘致阻止に向けて立ちあがった。
地元政財界に顔が効き、歴代総理経験者や自民党幹部との人脈も持つ保守の重鎮が、政権中枢に対して全面対決の姿勢を示したのだ。決戦の場となった横浜市長選で藤木は、住民投票条例の署名を法定数の3倍も集めた市民の力にすべてを懸けた。
(「映画.com」から)
横浜のカジノ誘致の是非をめぐって市長選が闘われた。
カジノ推進の代表は菅義偉総理大臣(当時)で、反対派は多くの横浜市民と「ハマのドン」こと91歳の藤木幸夫氏。
この横浜の市長選は、わたしも記憶に強く焼きついている。日本のカジノ建設の方向性を見極める意味でも関心の高い選挙だった。
藤木幸夫氏(ハマのドン)は、「これはオレと菅のケンカだ!」と明言し、まっこうから当時の最高権力者に向かっていく。
映画は、横浜港の歴史も描く。港湾労働者の過酷な歴史。
藤木氏いわく「おれは港湾労働者の苦労を知っている。港で博打(ばくち)はやらせない」
もともと藤木氏は、自民党員であり、政界の大物たちとも交友があった。だから、リベラルと保守との闘い、というわけではない。右左の思想とは関係ない。
利権で動かない人間の気っぷのよさ、古い言葉でいえば「男気(おとこぎ)」のようなもので、「ハマのドン」は、真正面から権力と対峙する。
選挙結果は「反対派」の山中竹春氏が当選し、横浜の「カジノ誘致」は中止になった。
「ドン」という言葉には引いてしまうものがあるけれど、この映画に描かれる「ハマのドン」には拍手したくなる。いや、実際に上映が終わって拍手が起こった。わたしも、それに加わった。
以前「報道ステーション」のディレクターであったが、古賀氏による生番組中の「I am not ABE」発言(用紙を掲げた)で、政府から強いクレームが入り、松原氏も古賀氏と一緒に番組を降りている。
古賀茂明氏はあとで、準レギュラーのわたしが降りるのはたいしたことではなかった。しかし、番組の女性ディレクターは、コメンテーターに自由な発言をさせてくれる人だった、番組から去るのは残念……そんなことをいっていた。
その松原文枝氏が監督をつとめたということも、『ハマのドン』を見たかった理由のひとつ。
一方で、いま大阪のカジノ誘致が、維新と政府で強行に推進されようとしている。
映画を見ながら、「大阪にも『なにわのドン』がいたらいいのに」と思った。
帰り、立呑み「春田屋」へ寄る。生ビールと黒ホッピーとハイボールで酔う。