かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

寅さんが、ストレートに失恋していた試練の時代

男はつらいよ 望郷篇 [DVD]
寅さんシリーズ第5作「男はつらいよ 望郷篇」をビデオで見ました。現在BSで寅さんシリーズが放送されているのですが、ぼくの家ではBSを見れないので、刺激を受けてレンタルして見ました。

この「望郷篇」は寅さんが「額に汗して働く」ことに挑戦するんですね。マドンナ(長山藍子)の家が豆腐屋さんで、そこへ住み込みで働くわけですけど、寅さんは、ここで周囲に迷惑をかけるわけでもなく、けっこう「水を得た魚」のように、地道な暮らしをはじめるわけです。豆腐屋のおかみさん(杉山とく子)、娘さん(長山藍子)にも有難がられ、町に自転車で豆腐を配達する姿も、心得たもんです。この作品を見る限り、寅さんが所帯をもって地道に働く姿も、まったくあり得ない現実とはおもえないのですが‥‥。

寅さんも、このころは若かったもんですから、失恋もストレートです。まさに「男はつらいよ」というタイトル通りの厳しい失恋をするわけですけど。しかし、女性の男性に対するコケティッシュな態度は、本人知るか知らぬかはともかく、男性を悩ませます。長山藍子の思わせぶりな態度をみれば、寅さんでなくても、自分に気があるのではないか、と勘違いしそうではありませんか。

寅さんシリーズも後半になると、寅さんは柴又の名物男になり、もはや「地道な暮し」を、妹さくら、おいちゃん、おばちゃんでさえ本気で期待することもなくなってしまいますが、この頃は「ヤクザな道から足を洗って、カタギになる」というのが、寅さんの大きな命題でもあったんですね。妹さくらの兄への願いもそこにあって、兄を気遣う倍賞千恵子のおさえた熱演が、マドンナ以上の魅力でありました。

「望郷篇」のデータは、こちら