かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

新藤兼人監督『人間』(1962年)



亀五郎を船長とする小さな荷役船「海神丸」は、2日分の食糧を積んで出発したが、竜巻に襲われて、遭難する。


20日が過ぎ、30日が過ぎる。助かるあても、望みも見出せない。


水は、幸運にも雨で補給できたが、食糧はやがて底を尽き、4人の<生>を賭けた確執がはじまる……。


★   ★   ★


極限状況に置かれた<人間>は、何を考え、どう行動するか、を問いかけた作品。小さな船の中だけのドラマなので、シンプルにテーマが追及される。


主演は<どうもどうものタイちゃん>(新藤兼人の言葉から)こと、殿山泰司新藤兼人が、脇役のときは、タイちゃんの自然流演技が生きるが、主演になると、大きな演技ができないので、ちょっとものたりない、というようなことを本で書いています。


しかし、この映画、特に佐藤慶乙羽信子がエゴを剥き出しにした激しい、<大きな演技>を見せる。それを受けるのが、極限下でも、良心を保とうとする船長の殿山泰司殿山泰司の自然流を逸脱しない、少し小さめな演技は、ぼくはバランスがとれている、とおもいました。