かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

木下恵介監督『笛吹川』(1960年)


笛吹川 [DVD]


★★★


戦国時代、甲斐の国。


笛吹川にかかる木橋のそばに、藁葺屋根の貧しい一軒の百姓家がある。


彼らの息子は、侍の出世を夢見、武田晴信のもとへ出仕し、やがて討ち死にする。


晴信は、信玄となり、甲斐の国は天下を狙うまでに生長していくが、やがて、信玄は病いで死に、武田家は壊滅していく。


藁葺屋根の孫も、また戦(いくさ)に出て、武田家とともに、死んだ。


★★★


「お館さまが何をしてくれた? もう戦(いくさ)にいくのはやめてくれ」


母の願いは、届かず、息子たちは(その子どもたちも)、貧しい百姓の暮らしを嫌い、侍の出世を夢見て、戦に行く。


映画は、武田家の隆運と衰亡を、笛吹川の貧農一家の眼から描く。


一家の住む笛吹川の情景が美しい。墨絵を見ているようだ。


その美しい白黒映像に、水彩絵の具を流したような赤・青・黄の色彩が着色される。そのふしぎな映像に目を奪われ、最後まで見入ってしまった。


高峰秀子が、嫁入りの新妻から、老婆になるまで、ひとりで演じ、時の流れを表している。


わたしにとって『笛吹川』は、収穫だった。