かぶとむし日記

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成瀬巳喜男監督『禍福』前・後編(1937年)


1937年といえば昭和12年の映画ですね。


劇団「さくら隊」を率いて広島に滞在、原爆を浴びて亡くなった丸山定夫が、主人公の父親役で出ているので、まずそれを見て、古い時代の映画なのだなあ、とわかりました。


原作は菊池寛のメロドラマで、捨てられた女の、男への復讐劇を描いて、見ていて退屈はしませんが、人間描写は類型を出ることがなく、成瀬巳喜男のあまり関心のなさそうな上流階級の愛憎劇で、筋立ても通りいっぺんな感じがします。


こういう上流階級が舞台の映画では、成瀬巳喜男の細部へのこだわりも薄く、下町も路地もチンドン屋も出る幕はなく、監督自ら意欲的に取り組んだ作品とはとうてい思えません。


とはいえ、成瀬巳喜男作品であれば、一見の価値あり(笑)。