かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

成瀬巳喜男監督『女人哀愁』(1937年)


広子(入江たか子)は、仲のいい従兄(いとこ)に淡い恋心を抱きながらも、親の薦める資産家の息子へ嫁いでいく。それが幸せだとおもっていた。


しかし、嫁いだ夫とは、仲のいい従兄とのような気軽な雑談ができない。そこには、厳然とした家のしきたりがあった。


夫は、気が向いたときだけは、かわいがってくれるが、妻を対等な人間とはおもっていない(イプセンの「人形の家」を連想させる)。


広子は、日々、家ぐるみで<無料家政婦>のようにこきつかわれる。


このなかで、夫の妹の女学生がふてぶてしい。


「わたし、お姉さんは嫌いだわ」といいながら、金はせびるは、用はいいつけるはで、こんな小姑がいたらたまらないだろう・・・という感じをよく出している。


この映画、ひとことでいえば<渡る世間は鬼ばかり>。


成瀬巳喜男は、後年『女の座』や『乱れる』などで、小姑が嫁をいびるような映画を撮るが、その片鱗がうかがえる作品。


成瀬巳喜男得意のテーマだ。ただ、ここにはテーマに義理立てしているような硬さがあって、後年のような、テーマの観念性を描写のなかにとかしこんだような自在さはない。


■ringoさんが、女性の立場から見た『女人哀愁』の感想が、こちらにあります。