6月14日㈮。
娘家族と的場の「くら寿司」で、夕飯を食べる。退院してはじめての外食。
「生ビール1杯くらいなら」とおもって、パネルで注文を入力している娘に頼んだら、隣りにすわっている双子のひとり「ミーミー」にギロッとにらまれたので、取り消す。
「泥酔→転倒→入院」の話を双子たちもきいているらしい。
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「入院→退院」以来読んでいるのが、川本三郎著『東京は遠かった〜改めて読む松本清張』。
戦後、昭和30年代…。
「東京」と「地方」、生まれた地域の格差。「エリート」と「非エリート」の経済的な落差。
そういう戦後の背景で、松本清張の犯罪は起こる。
松本清張はむかしある程度読んだが、ほとんどの内容を忘れている。それがツボをおさえた川本三郎氏の解説で読めば、よみがえり、もう一度読んでみたくなるし、映画化されたむかしの作品も見たくなる。
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この日は、Amazonプライムにある野村芳太郎監督『鬼畜』(1978年公開)を見ることにする。この作品は、妻もわたしも、キョーレツに記憶に残っている、怖い映画である。
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東武東上線の「男衾(おぶすま)駅」から、顔をひきつらせた菊代(小川真由美)が、背中にちいさな赤ん坊・庄二(1歳半)を背負い、ふたりの子、利一(6歳)、良子(4歳)をひき連れて、同じ東武東上線「川越市駅」へやってくる。
ちいさな印刷屋の亭主・宗吉(緒形拳)が、7年前に知りあい、鳥料理屋のお手伝い菊代に産ませた3人の子供だった。
宗吉の印刷屋は、はぶりがよかったむかしとは違い、今は日々のやりくりがたいへん。菊代への送金も、とだえがちだった。
菊代が、3人の子供を引き連れてのりこんできたのは、これ以上送金がとだえたら私たちは食っていけない、そのことだった。
宗吉の妻・お梅(岩下志麻)は、7年間の夫の裏切りを許せない。お梅と菊代ははげしい口論になる。そのあいだにたって、おろおろするばかりの宗吉を演じる緒形拳のなさけなさ、が胸をうつ。
話の折り合いがつかず、怒り狂った菊代は、連れてきた3人の子を宗吉とお梅の家へ残し、ひとりで帰っていく。
話はここからがスタート。
子供の処置に困った宗吉は、子供を遠くへつれていき、迷子・置き去りにしようとする。
「子棄て」……鬼畜の行為である。
それも、根っからの悪者ではない、気弱な男がとりうる最後の手段。
みずからが原因で招いた混乱に、対処するすべもない緒形拳の困惑の顔…。
問答無用…グイグイ引き込まれていく名作だった。ひさしぶりに堪能する。