かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

新藤兼人監督『狼』(1955年)

狼 [DVD]
それぞれ金に困って生活に追いつめられた5人の男女が、保険外交員の就職試験を受けにくる。運良く合格、と思ったら、受験者の全員が合格している。


張り切って保険の勧誘に精を出してみたが、契約は一向にとれず、ますます生活状況は、厳しさを増すばかり。


乙羽信子殿山泰司、浜村純、菅井一郎、高杉早苗……特に、この5人は、半年経っても、一件も契約がとれない。


この5人が、じつに冴えなくていい(笑)。日本の高度成長はまだ先、彼らの貧困は半端でなかった。


どうにもならなくなった5人は、ついに郵便局の公金を積んだ輸送車を襲う。襲撃はみごと成功! 大金を手にした5人は、それぞれ別れていくが……やがて警察の手が彼らにのびてくる。


ここまでの5人の生活の困窮ぶりが執拗に描かれているので、もちろん強盗サスペンス映画、というわけではない。しかし、ちっとも強盗らしくない、気の弱い5人が、輸送車を襲撃するところは、妙な可笑しさとスリルがある。


5人が、このまま無事に逃げて、幸せになってほしい、とおもうが、そうはうまくはいかない、ところで映画は終る。