アップするタイミングを失っていました。
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メタリカを、全然曲の知識のないまま見にいった。なぜ見にいったかというと、メタリカが登場したころ、「いいバンドだし、ライブを見たいな」とおもっていたら、来日がゲイリー・ムーアと重なってしまった。
そのころは、レンタルレコードへ行って、ゲイリー・ムーアのアルバムを集めていたころなので、ライブもメタリカではなく、ゲイリー・ムーアを選んだ。あれは何年のことだろう。
ネットで検索してみたら、わかった。メタリカが『メタル・ジャスティス』を出したあとで、彼らが来日コンサートを代々木国立競技場でやったのは、1989年だった。
ムーアのライブを若い知人と妻と3人で見た帰り、原宿駅の隣りに、露店のおでん屋があった。そこで、熱燗を飲んでいると、代々木国立競技場から、ヘヴィーメタルのファッションで固めたメタリカのファンが、ドオーッと原宿駅に向かってあふれてきた。
少し圧倒されながらおでんを食べていたが、そのとき、メタリカを見たかったなあ、とおもった。
その思いが、2010年9月25日さいたまスーパーアリーナでかなったのだ。
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ヘヴィーメタルのファンは全員、縦ノリのリズムにあわせて、首を振りながら、拳をいっせいに突き出すのだろうか。そういうことはとても出来ないので、浮いてしまうだろうな。
そんなよけいな心配をしながら、会場の1階席で、メタリカの登場を待った。
しかし、メタリカが登場し、問答無用のライブがはじまると、そんな心配はふっとんだ。
高い技術に裏付けられた確かな演奏と重厚なリズムに釘づけ。
アルバムを聴いていないので、曲の判別はつかない。それでも、早いリズムから、ゆったりしたバラードまで、このバンドは複雑な表情をもっているのがわかった。とにかく、演奏が優れている。
観客もよかった。スクリーンにアリーナ最前列のひとたちが、大写しで映されるが、その楽しい気分がこちらにまで伝わってくる。若いひとたちが、こんなに明朗で快活な表情を素直に見せているのは、ちょっと感動的だった。
おどろいたのは、アリーナの中央に2つくらい大きなひとの渦ができることだった。
メタリカの曲が、強烈でこれ以上ない速いリズムを叩き出すと、ほとんど裸になったファンたちが、いっせいに円を描くように、走り出す。
周囲のファンにぶつかって危険ではないのか、とはじめおもったが、彼らなりにちゃんと秩序ができているのか、早いリズムの曲になると、渦が出来て、テンポが落ち着くと、渦は解散する。
メタリカの演奏は、ふだんヘヴィーメタルを聴いていない、わたしのような白紙のファンも興奮させてしまうほど、すばらしかった。なかでもわたしは、ラーズ・ウルリッヒの天才的なドラミングに、目が離せなかった。
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不安と期待と五分五分で見にいったコンサートだったが、帰り、さいたま新都心の駅へ向うころは、いいライブを見たあとの高揚感に包まれ、早くどこかで一杯やりたい気分だった。