かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

2018年の最後に見た映画は『メアリーの総て』(12月30日)。

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12月30日、日曜日。


12時から「新宿シネマカリテ」へ、ハイファ・アル=マンスール監督、エル・ファニング主演の『メアリーの総て』を見にいく。



映画『メアリーの総て』予告編 (フランケンシュタインの著者)




ゴシック小説の古典的名作「フランケンシュタイン」を生み出したイギリスの女性作家メアリー・シェリーの波乱に満ちた半生を、エル・ファニング主演で映画化。


19世紀のイギリスで小説家を夢見る少女メアリーは妻子ある詩人パーシー・シェリーと出会う。2人は互いの才能に惹かれあい、情熱に身を任せて駆け落ちするが、メアリーは数々の悲劇に見舞われてしまう。


失意の中にあったメアリーは詩人バイロン卿の別荘で「みんなで1つずつ怪奇談を書いて披露しよう」と持ちかけられ……。


(「映画.com」より)
https://eiga.com/movie/89003/


古典的名作といっても、原作を読んでいるひとはどれだけいるのだろう? わたしは子供のころ子供用にリライトされた本で、かろうじて『フランケンシュタインの怪物』というタイトルで読んでいる。


フランケンシュタイン(正確には怪物)のイメージは、その後映画やテレビドラマで演じたボリフ・カーロフの顔でできあがっている。しかし、原作はただ醜い人造人間として登場してくる。


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ボリフ・カーロフ演じる「フランケンシュタインの怪物」。


原作(子供版にしても)に触れないでいると、あの人造人間の名前がフランケンシュタインとおもってしまいますし、実際かなり混同されています。しかし、フランケンシュタインというのは、人造人間をつくった博士の名前なんですね。


で、その人造人間の名前は?


ないみたいです(笑)。


だから、「怪物」とか「モンスター」と作中では呼ばれていたような記憶があります。


不鮮明な記憶をはっきりさせたいとおもい、電子書籍で「フランケンシュタイン」の本をダウンロードしましたが、まだ「まえがき」を読んでいるだんかいです。


フランケンシュタイン (光文社古典新訳文庫)

フランケンシュタイン (光文社古典新訳文庫)


しかし、この本(光文社古典新訳文庫)の「まえがき」は、今回の映画の主人公でもある作者、メアリー・シェリー本人が書いている興味ふかいものです(「まえがき」の最後に、「1831年10月15日、ロンドンにて」とあります)。


この原作については、ちゃんと読んだら、また感想を書きたいとおもっています。



赤子のように無心に生まれ、みんなの愛情を得たいのに、醜いがゆえに誰にも愛されない孤独な人造人間の哀しみを、メアリー・シェリーはなぜ描いたのか、というのがこの映画の主題。


メアリー・シェリー(エル・ファニング)は、パーシー・シェリー(ダグラス・ブース)と強い愛情で結ばれ、父の反対を押し切って「結婚」したはずなのに、すでにパーシー・シェリーには妻子がいたことがわかる。


ふたりの経済的破産、そこから派生する子供の死・・・メアリーとパーシーの生活はだんだん壊れていく。


そんななか、メアリーは、夫(?)のパーシーと、詩人バイロン卿の豪華屋敷に招待される。詩人・バイロン卿は、連日連夜、饗宴をたのしみながらも、倫理感が欠落している。夫もその饗宴に染まっていく。どこにもしまりのない自堕落な日々。


メアリーは、夫にも詩人バイロン卿にも失望していく・・・。



メアリーを演じたエル・ファニングは、実力派若手女優。透明感のある美人だけれど、翳りのある表情がうまい。複雑な感情を静かに表現できる女優だ。


フランケンシュタイン」を書いた女性作家をエル・ファニングが演じるというので見にいったが、とにかくエル・ファニングはすばらしかった!



帰りは、立飲み「春田屋」へ寄ってみる。


そこで、やきとんなどをつまみに、ホッピーと熱燗。電子書籍で、山本周五郎の『人情長屋』を読む。


この作家は、権威が嫌いなようだ。長屋に暮らす貧しいひとびとにエールを贈っている。直木賞をはじめ、すべての賞を辞退したことでも知られている。