『ベイビー・ブローカー』。
6月25日〜26日といえば、参議院選挙のまっただなか。
6月25日(土)。
川越で西みゆかさん(れいわ新選組・埼玉選挙区立候補者)の街宣があったので妻を誘って見にいった。酷暑のなかでの街宣。ボランティアの女性が、「西さんは演説にはいると水分とるのを忘れてしまうんです」と心配していた。
西さんは、前回わたしが街宣を見たときより日焼けしていた。でも、全身で激しいアクションをみせながら力強く演説する熱量は変わりない。
西さんの特徴は、自分の名前の連呼が非常に少ないこと。自分の政党と名前を中心に街宣をしているひとと真逆なのだ。
いまの日本の危険な状況を警告している。「この状況に気づいてください」と声を枯らしている。
消費税が、零細・中小企業者にどれだけ過酷な負担を与えているか。さらに、来年10月1日からはじまる「インボイス制度」がフリーランスなどの個人事業者に致命的なダメージを与えかねない。消費税がなくなれば、自然にインボイス制度は消滅する・・・「だから消費税は廃止しなきゃいけないんです」。
「改憲」と簡単にいいますが、その先にとって代わろうとする「自民党憲法草案」がどれほど酷いものか。
天皇が象徴ではなく元首に変わる。
個人や表現の自由よりも治安の維持が優先される。
「絶対に拷問をしてはいけない」の「絶対」が削除される。
平和憲法の要になる「国の交戦権を認めない」が「自民党憲法草案」ではバッサリ削除されている、など。
街宣に足をとめるひとは少ない。無関心に通り過ぎていく。
ほんとにこれでいいの?
後片付けを少し手伝って、次の街宣地へ向かう西さんとボランティアのひとたちと別れる。
★
6月26日(日)。
「ウニクス南古谷」へ、妻の運転で、是枝裕和監督の『ベイビー・ブローカー』を見にいく。1日も早く見たかった作品。
監督は是枝さんでも、映画に登場するのは韓国の俳優。これは韓国映画なのか日本映画なのか。資本が韓国から出ているのなら韓国映画なんだろうけど、まあどっちでもいい(笑)。
古びたクリーニング店を営みながらも借金に追われるサンヒョンと、赤ちゃんポストのある施設で働く児童養護施設出身のドンスには、「ベイビー・ブローカー」という裏稼業があった。ある土砂降りの雨の晩、2人は若い女ソヨンが赤ちゃんポストに預けた赤ん坊をこっそりと連れ去る。
(「映画.com」から)
https://eiga.com/movie/93673/
「赤ちゃんポスト」に捨てられた赤ちゃんを盗み、子供の欲しい夫婦に提供して、代金をもらう。それがサンヒョンとドンスの裏家業だった。
条件のあった夫婦に、車で「赤ちゃん」を届ける。遠いときは、途中で宿をとる。映画は自然ロード・ムービーになっている。
赤ちゃんを一度は捨てた若い母親ソヨンも、自分の子がどんな両親に育てられるのか見にいきたい、と旅に加わる。
赤ん坊を売って金にする「悪人」のはずが、要領が悪く、「善人」が顔を出す。
サンヒョンに名優ソン・ガンホ。
相棒のドンスに、カン・ドンウォン。
赤ちゃんを捨てた母・ソヨンに、イ・ジウン。
サンヒョンとドンスを追うスジン刑事に、ペ・ドゥナ。
イ刑事に、イ・ジュヨン。
など‥‥。
ソン・ガンホの出演作品は何本か見ている。映画によって役柄がかわるが、どんな役をやっても、中心にソン・ガンホという役者がいる。
是枝裕和監督は、過剰な演技を求めず、じっくりソン・ガンホいう役者の魅力を引き出している。この「過剰を廃してじっくり」は、是枝作品の全作品に通じる。
どの役者も、動きは少なく、内面を引き出されている。
演出もいいけれど、それに応えた韓国の俳優がみんなよかった。赤ちゃんを捨てた若い母親・ソヨンを演じたイ・ジウンが美しい。
旅に途中から同行する母のいない少年は、年上のソヨンに憧れる。
我が子を捨てなければならなかった複雑な事情を抱える女性も、少年の眼には、女神のように美しく見える。
是枝裕和作品には悪人らしい悪人が登場しないが、この『ベイビー・ブローカー』もそうだった。