モーパッサンの「脂肪の塊」を川口松太郎が翻案。西南戦争のさなか、町を出るため名士を乗せた馬車には酌婦のお雪たちも乗り合わせていた……。溝口作品としては珍しく銃撃戦が描かれる。
(「新文芸座」パンフレットより)
西郷軍と明治の官軍の戦い。パンフレットの通り、銃撃戦がある。もとが翻案のためなのか、溝口作品らしくない。ひとりの官軍将校を二人の酌婦が愛するが、「だからなんなのだ」というくらい何もそこにない(笑)。
酌婦を演じる山田五十鈴も『折鶴お千』のようなきわだった魅力を欠いている。名優山田五十鈴も、これ以上どうとも役の解釈のしようがなかったのかもしれない。
溝口作品らしくないのが、いまとなってはみどころ(笑)。天才監督とはいえ、全部が全部傑作でないのはあたりまえだ。