かぶとむし日記

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山本嘉次郎監督『ハワイ・マレー沖海戦』(1942年)


ハワイ・マレー沖海戦 [DVD]


あの戦争の時代、日本はどんな国策映画をつくっていたのか、そんな視点から見ました。


この映画は、真珠湾攻撃に成功したことを記念して、その1年後、海軍省の全面的な協力のもとに、創られた国威高揚映画です。さすが、海軍省の協力、戦闘機、軍艦、などは、実物が登場。戦後の映画では出せない迫力です。真珠湾爆撃シーンは、円谷英二の特撮で、ミニチュアが使われているようですが。


大型戦争映画としては、おもしろい作品かもしれませんが、ところどころで志気高揚のためにふるわれる長広舌は、いささか退屈。


<国民の滅私奉公>、<大元帥閣下のもとに生まれた国民の幸せ>、<自分を棄てて、国家のために尽くすことの尊い意義>などが、大河内伝次郎や藤田進の口から力強く語られます。


戦後まもなく、山本嘉次郎監督の弟子にあたる黒澤明は、反戦の闘士と、その妻の不屈の精神を描いた『わが青春に悔いなし』(1946年)をつくりました。


そこでは大河内伝次郎が<反戦思想>のために大学を追放される大学教授を、藤田進が、反戦活動のために牢獄死する反戦闘士を演じていますから、同じ俳優が、まったく違った考えの人間を演じ、二つの映画を並べてみると、なんとも皮肉な感慨をもたずにいられません。『わが青春に悔いなし』で反戦活動家の妻を演じた原節子も、『ハワイ・マレー沖海戦』では、兄を戦地にやった、銃後を守る妹の役で出ています。


息子を戦地に送り出した母は、「もうあの子はうちの子ではない」と潔く決意し、あとは、息子が天皇陛下やお国のために、お役に立てることをただ祈るばかり。そこに暗い悲壮感のようなものはありません。


戦時下(1942年12月3日)に公開され、大ヒット。3年後に経験する敗戦などは、まだ想像もできない、高揚感に貫かれた作品です。


ウィキペディアによれば、次の<実物>が映画に使われているようです。参考までに引用します。

■軍用機

■軍艦