かぶとむし日記

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市川崑監督『おとうと』(1960年)


おとうと [DVD]

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山田洋次監督の『おとうと』が、この作品にインスピレーションを受けて制作された、というので、見る。


結論からいうと、予想以上におもしろかった。


市川監督の『おとうと』を見ると、山田洋次監督がどのようなところにインスピレーションを受けたか、わかる。


映画の後半は、状況的にも、ふたつの作品がほとんど重なる。ラストシーンは、インスピレーションというより、もっとリメイクに近い。


ただおもしろさのみどころは、ふたつの作品はちがう。


市川崑版のみどころの中心は、姉の岸景子だが、山田洋次版は、笑福亭鶴瓶が、映画を仕切っている。


市川版の『おとうと』には、<おとうと>役の川口浩に、鶴瓶のような華やかな見せ場はない。


弟の性格設定が、ふたつの映画から受ける印象のちがいになっている。


姉弟>のつながりを描く映画としては、いっしょに暮らしながら、継母の独善に苦しみ、互いを守りあうという、市川版の<姉弟>のほうが、ムリがなく細やかで、共感の度合いも強い。



独善的な母を演じる田中絹代の演技が強く印象に残った。


森雅之は、この作品でもウケの演技が卓越している。目立たない演技がすごい。


いまの役者でいえば、それに匹敵するのは、加瀬亮だろう。山田洋次監督が蒼井優の惹き立て役に加瀬亮を起用したのも、なっとくしてしまう。