10月23日、水曜日。曇り。
先日、半分寝てしまった是枝裕和監督の『真実』を「イオンシネマ板橋」へ見にいく。こんどは見る時間の都合で日本語吹き替えで見た。
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とにかくセリフが多い。今回は寝てないし、日本語吹き替えだし、さすがに意味がわかったけれど、これを字幕で理解しながら見るのはちょっとつらいかもしれない。
ストーリーも明確にすすむわけではなく、ただ母と娘の確執がセリフをとおして明らかになってくる。しかし、わかりやすく回想シーンがあるわけではない。セリフだけ。ちょっとしんどい。
重要な人物としてサラというファビエンヌ(カトリーヌ・ドヌーブ)の姉妹か従姉妹(いとこ)が話に出てくる。このどちらなのかわたしにははっきりしなかったが、たぶん妹なのかな?
娘(ジュリエット・ビノシュ)のセリフから、ファビエンヌにコンプレックスを抱かせるほどのすばらしい女優だったことが匂わされる(サラは、もう亡くなってしまったようだ)。
ファビエンヌが、サラとの共演を避けてきたことも語られる。
サラは、この映画のなかで重要な人物なのだが、実際には映画に登場しない。回想シーンもなく、セリフのなかだけ。
観客は、母娘の会話の向こうに、女優同士だった姉妹の、過去の確執を想像しなければならない。
わたしは、こういう省略のきいた映画はどちらかというと好きなほうだけれど、字幕だけで想像し、理解していくのには、見る側に根気と集中力がいる。
母と娘の確執があきらかになる原因は、今回ファビエンヌが出した自伝本『真実』に、ほんとうのことが描かれいない、ということだけど、この自伝の内容も、なにが真実でどこが虚構なのか、そんな観客をヒリヒリさせるようなサスペンス的要素はない。
是枝監督はもちろんぜんぶ承知のうえだろう。もともと是枝作品は、説明が極端に少ない。見る側に想像させるシーンやセリフが多いのも、是枝流だから意外ではない。
ただ、これまでの作品と比べても、ドラマ性がうすい。そのうえ多くの観客は字幕を追っていかなければならない。
この大好きな監督を否定的にはとらえたくない。重厚ないい作品だった。
でも最高傑作だとはおもわなかった。