かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

映画『ベイビー・ブローカー』と是枝裕和監督「ティーチイン」(8月27日)。


是枝監督、ソン・ガンホカン・ドンウォン、イ・ジウン。川越スカラ座の写真ではありません。(西日本新聞より拝借)。




8月27日(土)。暑い。
川越駅へ妻に迎えにきてもらい、「武蔵野うどん」というところへはじめてはいってお昼。ビール1杯と肉汁うどん。うまかった。


「川越スカラ座」15時開場。


映画『ベイビー・ブローカー』上映と是枝裕和監督のティーチイン」(ご本人のトークと観客との質疑応答)。


クルマは、市役所の駐車場へ置く(土日・祝日は有料駐車場になる)。



15時30分から『ベイビー・ブローカー』上映。2度目なので油断していたら、前半少し眠ってしまった。横を見たら、妻も2度目のせいか、途中で、首が垂れていた。


しかし、とくに終盤の少し話の展開を省略して、理解を観客にあずけている空白の部分などは二度目で、マアマアわかった。


わたしは1度目見たとき、スジン刑事(ぺ・ドゥナが、最後赤ちゃんとなぜ海で遊んでいるのかよくわからなかった。


いまでもスッキリとはわからないが、なんとなく想像できる。赤ちゃんのおかあさん(イ・ジウン)が、赤ちゃんを預かってくれるようスジン刑事に頼んで、引換えに仲間を売ったのだろう。


それと、前のブログでも書いたけれど、暗い影をもったイ・ジウンのおかあさん、きれいだな。韓国の人気歌手だとあとで知ったが、俳優としてもとても魅力的だ。


映画の内容は、1度めに見たときブログに簡単な感想をあげているいので、このくらいに。


本編130分。



終映後、10分の休憩をはさんで是枝裕和監督がはいってきた。


話の聞き手は「川越スカラ座」のひと。さすがに是枝作品に詳しいし、一語一語考えながら話す是枝監督との間合いをつなぐのがうまい。


監督が「川越スカラ座」へ来るのは、『歩いても歩いても』(2008年公開)が最初で、それ以来10回目だという。


「川越スカラ座」へきている映画監督のなかで、是枝さんがいちばん多いと、スカラ座のひとがいった。


こういう地方のミニ・シアターまで律儀に足を運んでくれることにも、是枝裕和監督の誠実な性格がうかがわれる。


質問者がスクリーンに向かって右手一列に並ぶ。質疑応答の時間にはいる。


どの質問にも是枝監督はゆっくり答える。


「それはむずかしいなあ」とかいいながら考える。答えにくい質問も多いので、至極当然だ。



次に印象に残った質疑応答を箇条書きに記します。

  • ソン・ガンホさんのこと‥‥ソン・ガンホが現場にはいると空気が変わる。俳優もスタッフも一目置いているのがわかる。彼はときどき俳優にアドバイスするが、偉そうな態度はしない。
  • 一般に韓国映画はもっと感情を表に出す。是枝作品は感情を抑える。その点で何か韓国側から意見がなかったか?‥‥韓国映画だからというのはなくて、ぼくはいつもの映画の撮り方で撮った。そういう意見もあったかもしれないが、俳優さんたちは、感情を抑制した演技を気にいってくれていた。
  • 何か撮影の思い出があれば‥‥刑事役のペ・ドゥナは、以前『空気人形』(2009年公開)に出てもらっていた。だからぼくの考え方や好みを理解してくれている。最初韓国語の脚本があがってきたとき(是枝監督は韓国語はわからない)、「少し監督の考えとちがっているようです」といい、それを彼女が説明してくれた。ぺ・ドゥナのアドバイスが的確だったので、もう一度翻訳をやり直してもらった。とてもありがたかった。
  • 監督は、家族をテーマに何本も映画を撮っていますが「是枝監督にとって家族ってなんだとおもいますか?」‥‥(しばらく考えて)家族はこうだ、って限定した考え方はしないし、したくない。いまは家族を固定観念で押しつけるひとたちがたくさんいるけれど(与党批判だろうか)、家族はいろいろな形があっていいとおもう。「家族はこうだ」という考え方をするといろいろなものがこぼれ落ちてしまうのではないか。
  • いま新作を撮っています。今度は日本映画です(笑)。はじめて脚本を他のひとに書いてもらっています。公開は来年のいまごろかな? そのころまたきますね。11回目(笑)。


ひとつひとつの質問にていねいに答えるので、終わってみたら2時間近く経っていた。


途中で「もう7時か。夕飯などの準備もあるでしょうから予定のあるひとは遠慮なく退席してください」といってからまた、是枝監督は、残りの質問者にていねいに答えていた。


「無制限十番勝負」?(笑)


わたしは、すばらしい手応えを感じて「川越スカラ座」をあとにした。