5月22日㈬。
午前、練馬区役所へいき、印鑑証明4通。
練馬駅から池袋駅へ出て、ルミネの8Fにあるコーヒー・ショップで、映画の時間待ち。
1時間ほど、栗原康著『大杉栄伝 永遠のアナキズム』(Kindle版)を読む。
こちらはKindle版があるけど、先に読んだ同じ栗原康著『伊藤野枝伝 村に火をつけ、白痴になれ』は、紙の本しかなかった。このちがい。判断の基準はなんだろう。
『伊藤野枝伝』のほうは、大胆な、というか、くだけた文体で、おもしろかったが、それより以前に書かれた『大杉栄伝』は、文章も内容もかたくて、手強い。両方読むなら、先に『伊藤野枝伝』を読んだほうがいいかもしれない。
出版されたのは、『大杉栄伝』(2013年)が先。あとから『伊藤野枝伝』(2016年)が出ている。この3年間のあいだに、著者は、変幻自在の文章スタイルを獲得したのだろうか。まるで別人のような文章になっている。『伊藤野枝伝』は、おもしろい。
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午後から、「シネ・リーブル池袋」で、イルケル・チャタク監督の『ありふれた教室』(ドイツ映画)を見る。
ある中学校で発生した小さな事件が予想もつかない方向へと進み、校内の秩序が崩壊していく様を、ひとりの新任教師の目を通して描いたサスペンススリラー。ドイツの新鋭監督イルケル・チャタクの長編4作目。
(「映画.com」から)
学校という閉鎖された場所で、新任女性教師の、「善意」の行動が裏目に出て、学校のなかが狂いはじめる。
盗難事件が起こった。
学校は、抜き打ちで生徒の所持品検査をする。女教師は、さいしょから生徒を犯人あつかいする学校のやり方になっとくいかない。独自に犯人さがしをする。
自分のパソコンを「カメラ」に設定し、職員室におく。財布をおいたまま席をはずす。
そこへお金をぬきとる「犯人」が映る。しかし、見えるのは衣装だけ。顔までは映らない。
犯人は生徒ではなく、職員の女性だった。
しかし、女性職員は強固に犯行をみとめない。
そして、学校では「犯人」の割り出し以上に、職員室に「監視カメラ」をしかけた女教師への非難がたかまる。同僚からそっぽをむかれる。孤立する。
はじめから生徒を疑ってかかる強引な学校の「犯人調査」もひどい。
しかし、なんと生徒の不満は、学校ではなく、担任の女教師にむけられていく。悪いのは、ぼくらを学校から守ってくれない担任教師…おまえだ。
生徒たちもズルい。生徒をすぐに犯人としてきめつけ、停学だ退学だ、とさわぐ教員には怒りをむけず、自分たちをかばおうとする、女教師のやさしさ(弱点)を突く。
おまえも、おれたちを犯人扱いしたアホ教師のひとりだ。
彼女は、どこから道をまちがえたのか?
いや、まちがえてはいないはずなのに…。
同僚からも生徒からもバッシングを受け、女教師は追いつめられていく。
この不条理な映画、月並みの予定調和でおわらない。すてきだ。
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5月26日㈰。
午後から「ウニクス南古谷」へ、ジョナサン・グレイザー監督の『関心領域』(アメリカ・イギリス・ポーランド合作映画)を見にいく。
妻は、いっしょに行ったのに、「内容がこわいから見ない、買い物して待ってる」という。映画が終わる時間にまちあわせる。
映画『関心領域』。塀のむこうに見えるのは、アウシュビッツ強制収容所…。
タイトルの「The Zone of Interest(関心領域)」は、第2次世界大戦中、ナチス親衛隊がポーランド・オシフィエンチム郊外にあるアウシュビッツ強制収容所群を取り囲む40平方キロメートルの地域を表現するために使った言葉で、映画の中では強制収容所と壁一枚隔てた屋敷に住む収容所の所長とその家族の暮らしを描いていく。
(「映画.com」より)
cinemakingさんが、『関心領域』を詳しく解説している。
https://cinemaking.hatenablog.com/entry/2024/05/26/205749?_gl=1*qcbmjm*_gcl_au*Mjg3NjY2NzcxLjE3MTUyODIxMjQ.
そのコメントの一部に、わたしは、
以前何かの本で、ナチスの隊員は、ごくふつうの家庭人で、(家では)家族やペットを愛し、わたしたちサラリーマンと同じように、職場(収容所)へ向かい、仕事が終わると家族のもとへ帰ってくる。
20歳くらいに読んだのだけれど、意外な気はしなかった。そういうものなんだんろうな、って受けとめた。人間の心の奥ってふしぎだともおもった
この映画は、アウシュビッツ強制収容所の隣りに住む、ごくふつうの家族の生活が描かれていく。
塀のむこうでは、あとからあとから「煙」が立ち昇り、射撃音のような音もきこえてくる。
でも、家族にとっては、立ち昇る「煙」も「射撃音」も、日常の一部でしかない。誰も、いちいち心を動揺させてはいない。
それどころか、夫が他の強制収容所へ転勤するという話があって、妻に相談するが、彼女は、私はいまのこの生活を棄てたくない、と、いっしょにいくことを拒否する。夫は悩んだすえ、単身赴任で他の収容所へいく。
失いたくないほどのおだやかで平和な家族の生活が、アウシュビッツ強制収容所の隣りにあるのだ。
彼らの日常生活がこまごまと描かれていく。残念だけど、わたしはそのひとつひとつの描写の破片が何を意味するのかよくわからなくて、ストレスの多い映画でもあった。
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5月29㈰㈬。
「ウニクス南古谷」で、吉田恵輔監督の『ミッシング』を見る。見るのは2度目。
『ミッシング』。
はじめて見たときは、ひたすら映画のもつパワーに圧倒されっぱなしだったけど、こんどは落ち着いて見ることができた。
娘の行方不明に、こころが壊れていく妻をみながら、冷静さを保とうとしつつ、最後まで妻をおもいやる夫役の青山崇高が最高だった。
青山崇高が、妻役の石原さとみも、映画全体も、しっかり支えているのがわかった。
やっぱり傑作!
青山崇高と石原さとみ。
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本編冒頭7分間の映像。
www.youtube.com
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最初見たときの感想は、こちら。
https://beatle001.hatenablog.com/entry/2024/05/18/064603