以前石井輝男監督の『地獄』をブログに書いたとき、tougyouさんは、こんなコメントをくださいました。
beatleさん、中川信夫の『地獄』を観ました。寺山修司も、フェリーニも、パゾリーニも参ったと云いそうな、いい意味で丹波哲郎の映画に通じるものを感じました。若き日の三ツ矢歌子は浅丘ルリ子にちょっと似ていて可愛く美しかったのが嬉しかったです(笑)。
tougyouさん、本当に、三ツ矢歌子は可愛いですね。中川信夫の『地獄』は、石井輝男監督のものほどユーモアが表面に出ていないので、物語としてはかなり陰惨です・・・そういうなかで、可憐な三ツ矢歌子が清涼剤のような役割を果たしていました。
しかしやっぱり凄い映画です。前半は、この世の地獄。ともかく出てくるのは悪いやつばかり。えんえんとこの世の地獄が描かれて、最期は登場人物の全員が死んでしまう。
今回改めてみて、むかし見たより、この前半の、この世の地獄をおもしろく見ました。
しかし、中川信夫はこういうキワモノ的な映画でも、1シーン1シーンへの配慮はかなり気をつかっているのがわかりました。
悪徳父が経営している養老施設の名前は「天上園」。この周辺の風景、構図など、すでにこの世の光景ではないような暗い不気味な雰囲気が濃厚に漂います。
「天上園」の玄関には、右手に「天上園」の案内板があり、左手には濡れた日本傘が大きく開かれて、2つ干されています。物語には全然関係ないので、これは中川信夫監督の構図への純粋なこだわりだとおもいました。
そうした見るべき構図が前半には多いですけど、特に「天上園」は、この世と地獄への<境界線>として描いているのか、ふしぎな映像が多く出てきます。
「天上園」といいつつ、ここは悪徳経営者がやっている養老施設ですから、最期は腐った魚を食べさせられて、老人たちは全員死んでしまいます。この陰惨さは、怪談映画の巨匠中川信夫、ならではのもの。
★
天知茂以下、全員地獄へ堕ちて、八大地獄の裁きを受けるのが、後半。誰も知らない死後の世界<地獄>を、よくぞ、まともに映像化したとおもう。
やっぱり中川信夫はおもしろい。