7月6日、土曜日。曇り。
「川越スカラ座」で、イ・ジュンイク監督の『金子文子と朴烈(パクヨル)』をやっているとわかったので、妻の運転で見にいく。クルマは、市役所の有料駐車場へ置く。
以前、渋谷で見たときは、金子文子のことを何も知らないで見た。映画は、よかったし、金子文子という女性に強い興味をおぼえた。
それから、瀬戸内寂聴の『余白の春』を読み、いま金子文子が獄中で書いた手記『何がわたしをこうさせたか』を1/3くらい読んでいる。
少し前提の知識ができた。で、もう一度映画を見てみたかった。そこへ「川越スカラ座」での上映だった。
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チェ・ヒソ演じる金子文子は、理不尽な社会に怒りを感じながら、なお明るくて可憐だった。どん底を見てしまった渇いた明るさかもしれない。今回は朴烈を演じたイ・ジェフンの、内面をじっと見つめているような演技にも惹かれた。
金子文子は、幼少から無戸籍者(父母が戸籍にいれなかった)として苦しみ、その後、肉親からも親戚からも裏切られ続ける過酷な人生を生きた。何も信じられない。
朝鮮を欲望のままに支配する日本の帝国主義に反発し、文子は、抑圧を受ける朝鮮人のなかに「同志」を発見していく。
そして、彼女は朴烈(パクヨル)と出逢う。虚無主義者・金子文子にとって、朴烈は唯一の希望であり、全身全霊をかけて愛せる同志であった。
「どうか二人を一緒にギロチンに抛りあげてくれ。朴と共に死ぬるなら私は満足しよう。そして朴には言おう。よしんばお役人の宣言が二人を引き分けても、私は決してあなたを一人死なせては置かないつもりです」
と、文子は裁判のなかで潔く言い放つ。
文子の孤独な人生。両親、祖母、教師・・・だれひとり彼女を助けてくれるものはなかった。
でも、いま彼女は朴烈と出会い、幸せだった。
「朴(パク)と共に死ぬるなら私は満足しよう」という言葉に、金子文子がやっと辿りついた愛と安らぎをみて、わたしは救われた気持ちになった。
映画でも、チェ・ヒソがこの言葉を裁判のなかで力強くいう。
どん底を見てしまった文子。彼女は、アウトローとして生きた。権力に立ち向かう女性は、なんて気高く美しいことか。
韓国映画『金子文子と朴烈』は、最高の恋愛映画でもあった。また強い感銘を受ける。
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追記