かぶとむし日記

映画、音楽、本の感想を中心に日記を更新しています。

東日本大震災の記憶と、天野千尋監督『ミセス・ノイズィ』(快作!)(3月11日)。

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『ミセス・ノイズィ』。大高洋子(左)、篠原ゆき子、新津ちせ。






3月11日(木)、晴れ。東日本大震災から10年目にあたる日。


過去ブログで、2011年3月11日のことを振り返る。

スポーツクラブで汗をながしてから、いつもいくラーメン屋さんへいく。このお店は、中国人のおかみさんがやっている。


いつもレモンサワーを2杯たのむと、豪華なネギチャーシューと冷奴を、サービスでつまみに出してくれる。


(略)


「またよろしくね」と、少し日本語の抑揚がちがう(それが愛嬌にもなっている)おかみさんの声に送られて、お店を出る。ちょうど午後の2時だった。



「極貧荘」(註:当時わたしが借りていた24,000円の木造アパート)へ帰宅。パソコンにDVDをいれて、ロベール・アンリコ監督『冒険者たち』(1967年)を、見はじめる。


それからまもなく、、、


古い木造アパートの「極貧荘」が激しく揺れはじめた。ドアをあけて沈静化するのを待ったが、とてつもなく揺れ方がひどい。


落ちてくるような家具は何もないが、天井と蛍光灯が落下してくると困るので、頭に厚めのジャンバーをかぶった。


最初の揺れが静まったので、家族へ電話をいれてみるが、つながらない。あきらめて「地震大丈夫?」というメールをとりあえず送信する。


パソコンを「radiko」に切り換えて、ラジオで地震のニュースを聞く(註:アパートにはテレビがない)。思いのほか大きな地震で、東北の方は、大変なことになっているらしい。


それからも余震が断続的にきた。そのたびに、電気ストーブを消し、ドアをあける。そのくらいしか思いつかない。


それを繰り返しているうちに、酔いも効いてきて、眠ってしまった。



午後8時半頃、目をさまして、携帯をチェックしたが、受信はない。また家族の3人順々に電話してみると、なんどめかにやっと妻につながった。妻は子どもたちとも連絡がとれていて、みな無事であることを知った。


Nao(長男)は茨城県の牛久なので、被害が大きく、会社は停電して、アパートは、中がめちゃくちゃになっている。でも、アパートそのものは大丈夫だったらしい。停電はしてないが、水は止まっているとのこと。


Rei(長女)は、会社に今晩泊ることになっているので、とりあえず心配ない、とのこと。


妻にいわれて「新着メール問い合わせ」をやってみると、家族や知人からのメールが、まとめてはいってきた。


知人に無事であることを返信し、それぞれの状況を知らせてくれるようメールする。


こんなことを書いていた。



渋谷のユーロスペース天野千尋監督『ミセス・ノイズィ』を見にいく。


渋谷は、2020年9月26日に、津田肇監督、三吉彩花阿部純子主演『Daughters(ドーターズ)』を見にいったのが最後。


コーヒー屋さんで、30分ほど読書。村山由佳著『風よ あらしよ』Kindle版)を読みはじめる。先日吉川英治文学賞を受賞した小説。大杉栄とともに虐殺された無政府主義者伊藤野枝を主人公にしている。


以前から、伊藤野枝のことを知りたかった。


伊藤野枝を主人公にした小説は、瀬戸内寂聴著『美は乱調にあり』などがあるが、Kindle版にはなく、Amazonから本を取り寄せてみたら、文庫の活字があまりに小さいので、読むのをあきらめた経緯がある。







午前11時より、天野千尋監督『ミセス・ノイズィ』はじまる。







映画『ミセス・ノイズィ』予告編





フィガロの告白」の天野千尋が監督・脚本を手がけ、隣人同士の些細な対立が大事件へと発展していく様子を描いたサスペンスドラマ。



(「映画.com」より)
https://eiga.com/movie/91877/


この映画、おもしろい。どう進展していくのかわからない。


小説家の真紀、イライラが募っている。


うまくいかない原稿を書いていれば、そばにいる子供でさえ煩わしいだろうに、隣りからは、無神経に布団をパンパン叩く音がやまない。


編集者と小説家のやりとりも、こういうものだろう。売れるものが書けなくなると、扱いが冷たくなる。


脇役のひとりひとりが重要にからまってくる。子供も、重要な役割をもつ。脚本、うまいなあ。


真紀は、過去に一作だけヒット作があるが、その後大きなスランプに陥っている。すごく焦っている。ここでふんばらなければ、作家を廃業しなければならない由々しき事態だ。


なのに、隣りのモンスターおばさんときたら‥‥。



コメディ・タッチの前半が、後半になるとシリアスな展開に変わっていく。絶妙な構成。


書けない焦りが、真紀の視野を狭めている。真実には表と裏がある。自分で見えている世界が、真実とは限らない。真紀がそのことを気づくのに、時間がかかる。


真紀を演じた篠原ゆき子も、騒音おばさんを演じた大高洋子もよかった。


笑ったあとで、不覚にも泣かされてしまった(笑)。


巧みな時間の処理。内容は全然ちがうがカメラを止めるな!を見たときの新鮮なおどろきおもいだす。



ユーロスペース」では、上映が最後の日。まにあってよかった。


教えてくれたのは、keisukeさんのブログ。




keisuke42001.hatenablog.com